2011年02月19日

R・シャルチエ著『読書の文化史』―制作・堀口

制作・堀口です。
今回はちょっとカタい本を紹介してみたいと思います。

Fumikuraとして朗読の企画に関わっていると、「読む」ということについて、あれやこれやと意識的になります。
「朗読」も読み方のひとつなわけですが、ふつうの「読書」とどう違うんでしょうか?
そんなことを考えているときに読んだのが、今回紹介する『読書の文化史』という本です。

著者のシャルチエさんは、「アナール学派」(ちょっと卑猥な響きです)というのに分類されるフランス歴史の研究者です。
この本では、読むということが、とても複雑なものであることが述べられています。とはいえ、主張はとても明快で、「読み方というのは人それぞれで、純粋に書かれたものを理解しているわけではない」ということ、「いつ、どこで、どういう風に読むかによって、解釈が変わっていく」といった点が、この著者の言いたい事なのではないかと思います。
たしかに、身近なところで考えてみると、電車に乗って読書するのと、喫茶店で読書するのと、寝る前にベッドで読書するのだと、頭の中に入ってくるものが違うように感じます。

でもって、この人の指摘をふまえて「朗読の夜」のことを考えてみると、KAKUTAの「朗読の夜」で取り上げられる作品は、本屋に行けば容易に入手し、読むことができるかもしれないけれど、「朗読の夜」でしか経験できない読書経験というものがあるということになるのではないでしょうか。
言われてみると、前回の朗読公演でポストパフォーマンストークに出ていただいた能祖将夫さんも同じようなことをおっしゃっていました。
また、観客のみなさんからも「小説で読んだことがあったけど、そのときとはまた違った感じだった」という感想も聞いたことがあります。
そんなことを考えてみると、当たり前といえば当たり前かもしれませんが、この本で言われていることはとても納得いく指摘だと思います。

現在、KAKUTAメンバーは「グラデーションの夜」に向けて、準備作業にいそしんでいます。
ぜひみなさんには「朗読の夜」でしか経験することのできない読書経験をしていただければと思います。


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