佐賀野雅和 俳優活動休止のお知らせ

桑原裕子より:

KAKUTAはかつて、毎年のように劇団ワークショップをしていました。
いつの年も愉しく、たくさんの友人ができましたが、キャストとして劇団にお迎えできるのはその時々、ひとにぎり。

ワークショップの終わりにはいつも、「お互いに芝居を続けていたらいつか交わるときが来るよね」と挨拶をし、別れます。
実際にその後、別の形で再会できた仲間もいれば、いつのまにか連絡が途絶えてしまう人、東京を離れてしまった人、失礼ながらもう名前を思い出すことができなくなってしまった人もいます。

そういうものだと思います。それで良いと思います。

それぞれの道を歩み、交わるときが来たらそれは必然なんだと思うことにしているからです。

でも、ある年のワークショップ最終日、「どうにも別れがたいな」と思う役者がいました。
その役者は、決して華やかに目立つタイプではなく、目を見張るようなイケメンでもなく、不器用で、年もそこそこいってて、おまけに誰もが目立ちたいはずの発表会でも自分の出番よりチームのことばかり考えているような、バカがつくほどの人の良さ。
生真面目に履歴書を書き三年連続でワークショップに参加して、やっぱり芝居が好きだと言って帰っていくその俳優を、今日はどうしても帰したくないわと思ってしまった2009年、飲みの席でひっそりと「劇団員になって」と口説いてしまったのが、その役者、佐賀野雅和とKAKUTAのはじまりでした。

それから8年、うだつのあがらない清掃夫や、お調子者の僧侶、定職に就かない放蕩息子、ヤンキー上がりのタクシー運転手、犯罪者、うだつのあがらない清掃夫(二回目)・・・と、こう書けばどうかと思う役ばかりを演じてもらいましたが、ビルとビルの隙間にぽつりとできた陽だまりで健気に花を開くタンポポや、神社の裏にひとつだけ落ちているビー玉、安アパートの窓辺にたなびく労働者のくたびれたTシャツ。
そんな風景、そういう男を描きたいというときに、いつも彼の姿が浮かび上がってくるのでした。

ぶきっちょで、ちょっとバカで、生きるのが下手で、でも懸命に生きていて、笑い声は一級品。それが佐賀野雅和という俳優の魅力です。

佐賀野君にはKAKUTAともうふたつ、大切にしている家があります。それは北海道にある彼の故郷と、彼が店長をしている浜松町の居酒屋「ハ印」です。イカわたのおいしい、粋で愉しいお店です。

三つとも大事にしていくことはとても大変です。だから、彼は俳優という立場を離れ、二つの家を守っていくことに決めたといいました。
それならわかったと、KAKUTAは別れの寂しさをごまかすように、ハ印へ通い倒し、おいしい酒をいただくことに決めました。

これまで佐賀野雅和を応援してくださった皆さま、本当にありがとうございました。

表向きKAKUTAの人ではなくなりますが、これからもKAKUTAのOBとしてチョコチョコと顔を出してくれることと思います。その時は、お気軽に「店長!」とか「マサ!」とお声をかけてくださると嬉しいです。

そして、佐賀野は今日もハ印のひと、いや、もはや「ハ印の顔」として、浜松町で元気に働いております。近隣へお越しの際は、ぜひ足をお運びくださいませ。一級品の笑い声でお待ちしております。

これからもどうぞ、ハ印とKAKUTAの佐賀野雅和を、よろしくお願い申し上げます。

KAKUTA 桑原裕子 



佐賀野雅和より:

『縁』

KAKUTAと出会ったのは17年前になります。

当時、別の劇団に所属していた僕は、劇団員の高山(当時は高山も劇団員では無かったのですが)を通じてKAKUTAを知りました。
自分も同世代のくせに、面白いなあ、好きだなあ、出演してみたいなあ、なんて一種の憧れの様な感情を抱きながら公演がある度に、それからほぼ毎回観劇していました。

昔、僕は2年程少し芝居から離れている時期がありました。KAKUTAのワークショップに初めて参加したのがその頃です。地獄の様なスケジュール、嘘だろ?って位、毎日課題は出るし、ワークショップの時間外も皆で集まって色んな事に大忙し、寝る間を削ってもう大変。 本当にしんどかったけど、本当に充実した5日間。僕とKAKUTAの距離がグッと縮まった瞬間を今でもたまに思い出します。

その後、何度かワークショップに参加したのちに、阿佐ヶ谷の居酒屋で、朝方すっと横に座り「一緒にやらない?」と桑原に誘われ、KAKUTAに入団する事になって8年。KAKUTAが僕に芝居の楽しさを再び教えてくれたこと。それに対する感謝の気持ちはあれからずっと、今でも変わりません。

この度、僕は俳優から離れ新たな道を進む事に致しました。故に、KAKUTAからも離れる事になります。今まで応援してく下さった皆様、お世話になったスタッフの皆様、関係者の皆様、劇団員の皆んな、家族、KAKUTAを通じて出会った全ての皆様、本当に本当にありがとうございました。

縁(えにし)、これは僕が参加したKAKUTAワークショップオーデイションの題名です。その時、KAKUTAから届いた手紙をさっき久しぶりに読んでみました。そこには、「この出会いはかけがえのない財産です」と書いてありました。KAKUTAにいた8年間で、僕はたくさんの数えきれない出会いを貰い、色々の方との縁が生まれました。それはこれからの人生にとって凄く大切な宝物になることと思います。

道は違えど、縁は変わらず。そんな気持ちで新たな道を進みます。

最後になりますが、本当に8年間ありがとうございました。これからは、KAKUTAの劇団員ではなくなりますが、KAKUTAファンは変わりません。
今までと変わらず、陰ながら、親戚のようにぴったりと寄り添い応援していこうと思いますので、KAKUTA共々これからも宜しくお願い致します!

僕は浜松町の「ハ印」というお店に毎日おります。お近くに来た時は是非共寄っていってくださいませ。

お待ちしております!

佐賀野雅和