『朗読の夜』シリーズは、KAKUTAが通常の演劇公演と並行し、ライフワークとして不定期に上演している朗読公演です。
毎公演ごとに「星」「女性」など作品テーマを設けて小説を選び、ギャラリーやプラネタリウム等、劇場以外の場所も舞台空間に用いて朗読劇を上演しています。

俳優が実際に動き、演じる。
"かぎりなく演劇に近い朗読”として2004年にはじまってから10年以上。
さまざまな空間で音楽や映像とコラボレーションし、小説世界を演劇で見せるこのシリーズで上演した作品は35作品にのぼります。

今回の「アンコールの夜」では、過去の作品群の中から、みなさまの投票の結果、リクエストを多くいただいた作品をアンコール上演いたします!!







 
 
作品一覧

「ねこはしる」
川上弘美 著

「離さない」
川上弘美 著

「神様」
川上弘美 著

「草上の昼食」
川上弘美 著

「ぽたん」
川上弘美 著

「川」
川上弘美 著

「おめでとう」
川上弘美 著

「一番星」
田口ランディ 著

「星の光は昔の光」
川上弘美 著

「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」
村上春樹 著

「いつか、ずっと昔」
江國香織 著

「神様」
川上弘美 著

「夏休み」
川上弘美 著

「河童玉」
川上弘美 著

「クリスマス」
川上弘美 著

「星の光は昔の光」
川上弘美 著

「離さない」
川上弘美 著

「春立つ」
川上弘美 著

「花野」
川上弘美 著

「草上の昼食」
川上弘美 著

「あなたをはなさない」
井上夢人 著

「生きがい」
小池真理子 著

「縁切り神社」
田口ランディ 著

「昨日公園」
朱川湊人 著

「ネオン」
桐野夏生 著

「ピエロ男」
田口ランディ 著

「正直袋の神経衰弱」
いしいしんじ 著

「夜のドライブ」
川上弘美 著

「デッドガール」
桐野夏生 著

「ささやく鏡」
今邑彩 著

「迷路」
阿刀田高 著

「いま何時?」
田辺聖子 著

「わか葉の恋」
角田光代 著

「春太の毎日」
三浦しをん 著

「テンガロンハット」
沼田まほかる 著

「虎の肉球は消音器」
平山夢明 著

「炎上する君」
西加奈子 著

「神様 2011」
川上弘美 著
 
作品紹介
#1 KAKUTAとアルケミスト
「朗読の夜」@恵比寿ギャラリーSite

オリジナル戯曲をもとに公演を行ってきたKAKUTAが新たに挑んだ朗読公演第一弾。
ゲストにミュージシャン・アルケミストを迎え、工藤直子の名作童話『ねこはしる』をオール劇団員キャストで上演。都会の隠れ家のようなギャラリー空間を生命力溢れるうたとことばで満たした。

 

「ねこはしる」 工藤直子著 (童話屋)

そうなんだ きみとおれ
いっしょに風の音をきく いっしょに笑い、はしる!

内気でのろまな黒猫ランと、ひとりぼっちの魚に芽生えた友情。ふたりの出会いと別れを通じて描かれる、こどもからおとなへの成長の軌跡が、移ろう季節とともに2人の周りで生きる様々な生き物たちの優しい目線で語られてゆく。

#童話 #友情 #感動 #うた #アルケミスト

 
#2 KAKUTAと麻生美代子
「女の夜」@恵比寿ギャラリーSite

特別ゲストに女優・麻生美代子を迎え、長い時間ひとりで恋人を待つ「女」、その女の元へ訪れた旅人との短いやりとりを描いたオリジナルストーリーを軸に、川上弘美の短編小説を2プログラムに分けて上演。
イラストレーター・KOJOPOM氏による映像も真夏の夜に綴られた女たちの物語を寄り添うように彩った。

 

「ぽたん」 川上弘美著 (新潮社『おめでとう』所収)

日曜日ごとに飼っているメンドリを公園に散歩させにくるミカミさんを、日曜日の夕刻、約束したわけでもない「わたし」は待っている。週に一度、雨天中止。そういう逢瀬、ともいえなくもなく。
ぽっかり明るく深々切ない、川上弘美の恋愛短篇集「おめでとう」からの一作。散歩するニワトリを眺める男女の他愛ないやりとりから、ほんのりとただよう恋の予感が綴られる。

#恋のはじまり #日常

 

「川」 川上弘美著 (新潮社『おめでとう』所収)

「一郎、こういうときがまた来るかな」どこまでもゆっくりと流れていく川を眺めながら、恋人に抱き寄せられる、そのひととき。

『ぽたん』と並び川上弘美の恋愛短編集「おめでとう」からの一作。恋人とのいつか訪れる別れを想いながら、寂しくも幸せな瞬間をいとおしむ女の心情が情景豊かに描かれる。

#恋愛 #幸せ #風景

 

「おめでとう」 川上弘美著 (新潮社『おめでとう』所収)

忘れないでいよう。今のことを。今までのことを。これからのことを。

女たちのよるべない恋を綴った短篇集「おめでとう」。その最後をしめる表題作は、西暦三千年の荒涼とした終末感のなかでやわらかに綴られる、ひとりの女のラブレター。

朗読の夜シリーズ「女の夜」では、声優・麻生美代子が、恋人を長い間ひとりで待ち続ける女を演じた。

#未来 #恋愛 #孤独

 
#3 KAKUTAとアルケミストとスターホール
「満天の夜/ねこはしる」
@東急まちだスターホール

再びゲストにアルケミストを迎え「星」をテーマにした物語を東急まちだスターホールの全面協力を得て上演したプラネタリウム公演。
360度のドームスクリーンいっぱいに映し出される満天の星空のもと、珠玉の歌と物語が響き合った。
同時上演は第一回公演で好評を博した工藤直子の名作童話「ねこはしる」。

 

「一番星」 田口ランディ著 (大和出版『その夜、ぼくは奇跡を祈った』所収)

クリスマスイブ、いつもどおり仕事をする「わたし」。体調が悪くなり早退したいと告げても仕事仲間は素っ気ない。「必要なのは私なのか?」自分の存在価値を繋ぎ止めようとデスクワークに躍起になるのももう疲れた。一人きりの帰り道、ふと夕暮れの空に明るく浮かぶ光を見つける。あれは…UFO?
孤独で臆病な「わたし」が見つけたクリスマスのささやかな奇跡。

#星 #クリスマス #心の変化

 

「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子と出会うことについて」 村上春樹著 (講談社『カンガルー日和』所収)

四月のある晴れた朝、原宿の裏通りで僕は100パーセントの女の子とすれ違う―。
自分にとって運命のひとだと直感しながらも、声をかけることも出来ずすれ違っていく男女の淡い哀しみが、「僕」の疾走する妄想と共に軽快な語りによって綴られていく。
都会の片隅のささやかなメルヘンを、知的センチメンタリズムと繊細なまなざしで拾い上げる村上春樹作品。

#片思い #運命 #都会的メルヘン

 

「いつか、ずっと昔」 江國香織著(新潮社『つめたいよるに』所収)

いつか、ずっと昔、私はへびだったことがある。と思ったとたんに礼子はへびになっていた― 。
結婚を約束した恋人と寄り添う月夜、怖いほど美しい満開の桜を眺めていた礼子の前に現れた、”いつかずっと昔”の恋人たち。かつて存在した記憶をたどり、時空を超えて再会する様々な生き物の恋人たちとの夕べを幻想的に描く大人の寓話。

#輪廻転生 #動物 #昔の記憶

 
#4 KAKUTAと川上弘美+Friends
「神様の夜」@恵比寿ギャラリーSite

川上弘美の短篇集『神様』に収録されている全9作品を「悪くない休日」「ひとりじゃない」「魅せられる」「さようなら」と4つのテーマに分けて一ヶ月間連続上演。ピアニスト・高戸渉による生演奏をはじめプログラムごとに特色を分けるほか、全プログラムを通して一本のオリジナルストーリーが見える仕組みになっていた。

 

「神様」 川上弘美著 (中央公論社『神様』所収)

くまにさそわれて散歩に出る。川原に行くのである―。

マンションの3つ隣りの部屋に越してきたくまと「わたし」が過ごすうららかな夏の休日。
四季おりおりに現れる不思議な生き物たちとのふれあいと別れをつづる短編小説「神様」。川上弘美のデビュー作でもある表題作は、「朗読の夜」シリーズでも過去に三度上演された。

#ほのぼの #動物 #寓話

 

「夏休み」 川上弘美著 (中央公論社『神様』所収)

原田さんの梨畑で働きはじめた「わたし」が出会ったのは、梨を食べ、甲高い声で喋り走り回る、白くて小さな生き物。梨がとれる季節になると現れ、夏の終わりに消えていくというその生き物を「わたし」は家に連れて帰った――

奇妙な彼等たちとの触れ合いを通じて自分と向き合う「わたし」の、少し不思議でほんのり怖く、どこか切ない夏休み。

#田舎 #奇妙な生き物 #夏

 

「河童玉」 川上弘美著 (中央公論社『神様』所収)

寺へ精進料理を食べに来た「わたし」と友人のウテナさんは、突如現れた河童によって池の底の宴に誘われる。何でもその河童は女河童との夜の営みがうまくいかず、近頃「人間界で最も奥深い失恋をした」ウテナさんにご教授いただきたいというのだが…。

のんきで陽気な河童たちとの、愉快で猥雑な秋の一夜。

#妖怪 #踊り #性的

 

「クリスマス」 川上弘美著 (中央公論社『神様』所収)

冬のある日、友人のウテナさんのくれた壺を何となくこすってみると、中から一人の女幽霊が現れた。「コスミスミコ」と名乗るその彼女は、男女間の“チジョウノモツレ”で幽霊になってしまったらしい。

無邪気で愛らしいコスミスミコとはじまる奇妙で愉しい共同生活。クリスマスには一緒に街にも繰り出して…。

#女友達 #幽霊 #クリスマス

 

「星の光は昔の光」 川上弘美著 (中央公論社『神様』所収)

あまり家に帰らない父親、それで「ニンゲンフシン」になってしまった母親との間で揺れる少年・えび男くんが、一人暮らしの「わたし」の家に時々訪れるようになった――

ふたりで過ごす、寂しくも優しい温もりに満ちた冬の日々。
川上弘美の短編集「神様」に収録されている今作は「朗読の夜」シリーズでは二度上演され、美しい星空の投影が物語を彩った。

#子供 #冬の星空 #寄り添う愛情

 

「離さない」 川上弘美著 (中央公論社『神様』所収)

「わたし」の部屋の上に住むエノモトさんは旅先で見つけた人魚を家に連れ帰ってしまった。その人魚をわたしに預かってくれという。仕方なくわたしは人魚と暮らすが、一週間もたたないうちに人魚の虜になってしまう…。

人魚の存在に魅了され、執着し、支配されていく日常が妖艶に描かれるミステリアスな作品。

#執着 #誘惑 #伝説上の生き物

 

「春立つ」 川上弘美著 (中央公論社『神様』所収)

「春だからさ、たまにはまあ話してみるかね」

立春のある日、行きつけのバー「猫屋」の女主人・カナエさんが「わたし」に語ってくれたのは、若い頃に雪の降る町で魅せられた、ある男との恋物語だった。想いが募ると雪が溶けるように姿を消してしまう男。男に焦がれるほど雪深い伝承の世界にカナエさんは閉じ込められて――

#伝承 #恋 #時間。

 

「花野」 川上弘美著 (中央公論社『神様』所収)

秋の野原を歩いていると、背中から声をかけられた。五年前に死んだ叔父である――
事故で死んだ叔父は「わたし」が一人でいるときに時々現れる。逢えば遺した家族の近況や、政治や相撲などの雑談を交わすが、時が経つごとに叔父の姿は薄く透き通ってゆくのだった…。

亡き叔父とのユーモラスな対話のなかにあわあわとした哀しみが漂う。

#死後の世界 #食事 #哲学

 

「草上の昼食」 川上弘美著 (中央公論社『神様』所収)

「人とくまは、違うものなんですね」

くまに誘われて、久しぶりに散歩に出る――「神様」の続編であり、完結編。セコハンの車を運転し、ベランダのプランターでナズナを育て、ワインと手作りの昼食を振る舞うくまだけど、やはり人間界にはなじめない。もうすぐ故郷に帰るくまと「わたし」が過ごす、穏やかに切ない草原のピクニック。

#別れ #動物 #寓話 #続編

 
#5
「帰れない夜」@下北沢 ザ・スズナリ

ギャラリー、プラネタリウムと様々な場所で上演を試みてきた
「朗読の夜」シリーズ初の劇場公演。
引越しを機にある男の住む古い家に通うようになった女のオリジナルストーリーを軸にホラーテイストな4作品を上演。下北沢ザ・スズナリ劇場の劇空間と奥行きのある舞台美術がシリーズのさらなる可能性を広げた。

 

「あなたをはなさない」 井上夢人著(講談社文庫『あわせ鏡に飛び込んで』所収)

差し伸べられた手を取ったのは条件反射だった。それが‘彼女’の罠だとも気付かずに―

別れ際、「僕」は恋人に両手を差し出され、思わずその手を握り返す。
しかし恋人の左手は密かに手の平に塗っていた瞬間接着剤によって、「僕」の右手にぴったりと吸い付いてしまった。やがて思いもかけない結末が男を待ち構える。

#ブラックコメディ #男女 #異常な思考

 

「生きがい」 小池真理子著(角川ホラー文庫『ゆがんだ闇』所収)

飛行機事故で夫と子供を亡くした「私」は、夫の遺したアパートの管理人をして細々と暮らしている。
かつては満室だったアパートも、ある理由から住人が次々と出て行き、今は貧乏大学生のノボルだけ。ノボルが風邪を引いて寝込んでいることを知った「私」は、息子のようにかいがいしく看病をする。
「生きがい」を失ったものが同時に見失っていたある真実とは…。

#愛 #孤独 #衝撃の結末

 

「縁切り神社」 田口ランディ著(幻冬舎文庫『縁切り神社』所収)

恋人と別れ京都へ一人旅にやってきた「私」は、縁切り祈願ばかりを書き綴った絵馬がズラリと並んでいる神社を見つけた。薄気味悪さを憶えながらも一つ一つ見て回ると、ある絵馬を見つけて足を止める。
そこには自分と、別れたばかりの恋人の名前が…。
短い恋愛の影にあったもう一人の存在。絵馬から迫る執念が静かな恐怖を帯びて描かれる。

#恋愛の終わり #怨念 #ホラーテイスト 

 

「昨日公園」 朱川湊人著(文春文庫『都市伝説セピア』所収)

息子と公園へ遊びにやってきた遠藤は、その公園で子供の頃に体験したある出来事を思い出していた。
あの日の夕方、いつものように遊んで別れた親友マチは事故で帰らぬ人となった。だが、悲しみに暮れた遠藤が翌日同じ公園へ行くと…マチと別れる前のあの夕方に時間がもどっているのだった。
昭和の情景の中で綴られる、哀しくも胸に染みる不思議譚。

#昭和 #ノスタルジー #SF

 
#6
「グラデーションの夜」
@アトリエヘリコプター

都会の夜をテーマに写真家の相川博昭が写す東京の町並みを舞台上に映写した「群青の夜」、闇をテーマに漫画家・柊ゆたかとコラボして全編ホラー小説を上演した「黒の夜」、歌手の花れん&ピアニストの扇谷研人を迎え、音楽にのせて様々な恋のカタチを描いた「桃色の夜」と、三色それぞれに異なるテーマの三プログラムを上演。

 

「ネオン」 桐野夏生著(文春文庫刊『錆びる心』所収)

歌舞伎町に事務所を構える暴力団、櫻井組。ある日、いつものように見回りをしていた桜井は島尻という若い青年に出会う。妙な広島弁を操り、組に入れて欲しいという血気盛んなその男に、歌舞伎町で勢力を広げたいと願う桜井は他の構成員たちと違う不思議な魅力を感じ、期待をかけるのだが…。
人の心の裏側を描く短篇集『ネオン』からの一作。

#仁義なき戦い #新宿 #シニカル

 

「ピエロ男」 田口ランディ著(文春文庫刊『ドリームタイム』所収)

男にフラれた夜に訪れた公園で、「私」の前に現れたピエロ男。話しかければ抑揚のない声で答えてくれるが、その表情は変わることなく感情を見せることもない。時には黙ってエラー…。しかしそんなピエロ男との対話に不思議な安らぎを感じた私は、翌日も公園へ出向くのだった。

現実と夢のあわいを行き来する短篇集「ドリームタイム」からの一遍。

#都会 #孤独 #濃密な会話

 

「正直袋の神経衰弱」 いしいしんじ著(新潮文庫刊『東京夜話』所収)

「朝、歯を磨いていると、池袋がやって来た」
有名な観光地があるわけでもなく、洗練されているわけでもない。新宿や渋谷と並んでもどこか中途半端な町、池袋。
「自分は誰にも気にしてもらえない」自暴自棄になり、田舎に帰ると嘆く池袋を励ますため「僕」は池袋に出かける…。
擬人化された池袋の町と過ごす一日がコミカルに描かれる。

#笑いあり #池袋 #ほのぼの

 

「夜のドライブ」 川上弘美著(文春文庫刊『あなたと、どこかへ。』所収)

40歳を過ぎた独身の「私」が母を誘って車で出かけた一泊の温泉旅行。二年前に父を亡くして以来、一緒に暮らそうという提案にも応じず一人で暮らしている母。ドライブインがあるからと断ったにもかかわらず用意してきたちらしずしのお弁当。鰯の梅干し煮。
旅の行き先は豪華な旅館。その夜、母が娘に頼んだことは――
しみじみと染みるショートストーリー。

#旅 #母娘 #せつない

 

「デッドガール」 桐野夏生著(新潮文庫刊『ジオラマ』所収)

OLのカズミは売春婦という夜の顔を持つ。男への嫌悪と憎しみを抱きながらも仕事を続けるカズミは、ある男と入ったラブホテルで異臭を嗅ぐ。
「もしかすると自分から漂ってきたのかもしれない」
そこへ突然現れた見知らぬ女。男がシャワーを浴びている間に勝手に部屋へ上がり込んだ女は、戸惑うカズミをよそに馴れ馴れしく話しかけてくるのだった。

#ホラー #衝撃の結末 #サスペンス

 

「ささやく鏡」 今邑彩著(集英社文庫刊『よもつひらさか』所収)

亡くなった祖母から受け継いだ古い手鏡をある日手にとって眺めた「私」は、そこに映るのが現在の自分ではなく、少し先の未来にいる自分であることを知る。以来、折にふれて鏡を見てはこの先起きる怪我や恋の始まりを鏡を通して確かめてきたが、ある日映った自分の姿に恐ろしい未来が待っていることを知り――
戦慄と恐怖の異世界を紡ぎ出すホラー短編。

#ホラー #衝撃の結末 #サスペンス

 

「迷路」 阿刀田高著(新潮文庫刊『七つの怖い扉』所収)

「もう死体が消える頃だ――」
昌治は子供の頃から、おつむが少々「薄ぼんやり」している。何かが起きても時間が経つと、あれは本当のことだったのか?…わからなくなってしまう。
あの時、昌治のいたずらで井戸に落ちたはずの少女が数日後には消えてしまっても、「あれは不思議な井戸なんだ」そう言い聞かせているうちにいつの間にかぼんやりしてしまう…。

#ホラー #衝撃の結末 #昔話

 

「いま何時?」 田辺聖子著(新潮文庫刊『三十すぎのぼたん雪』所収)

雑誌「ランラン」や「メンメ」が教えるように、強引にでも男性の気を引きたいのだが、はずかしがりやの「私」にはそれができない。そんな「私」が抵抗なく男性としゃべるために考えたいちばんいい方法が「いま、何時ですか?」と聞くことである。
ささやかなやり取りだけで満足していた内気な主人公が、島根の旅路、ある男に出会う。

#30代独身女性 #旅情 #女流作家

 

「わか葉の恋」 角田光代著(ハルキ文庫刊『オトナの片思い』所収)

友佳が、大人になったんだなぁと実感するのは、離婚後行きつけとなった「わか葉」でおろしカツ定食を食べる時だ。そして現在、友佳はその店で顔なじみの息子ほど年の離れた男の子に恋をしている。しかしだからと言ってどうしたいとは思わない。だってそれが大人の恋の特権だから。
恋や愛に疲れた、大人の女性の恋のカタチとは。

#オトナの片思い #独身女性 #恋の力

 

「春太の毎日」 三浦しをん著(新潮文庫刊『きみはポラリス』所収)

タフで若くて魅力あふれる春太と住む家に、麻子は米倉という他の男を招き入れる。麻子の一番は春太であるはずなのだが、たとえ彼女の哀しみを感じても“命の長さが異なる”春太に出来ることはあまりにも少ない。だって春太は、犬なのだから…。
桜の季節を通して少しずつ変化していく三角関係が飼い犬・春太の視点で描かれる異色のラブストーリー。

#動物 #愛のカタチ #切ない恋

 
#7
「アイロニーの夜」
@すみだパークスタジオ倉

「皮肉」をテーマに、沼田まほかる・平山夢明・西加奈子・川上弘美とバラエティ豊かな異色の取り合わせで崩壊する日常を描いた短編4作品を上演。
開場前のロビースペースではキャストが日替わりでミニ朗読会を行うなど、自由度の高いすみだパークスタジオ倉の特性を活かし好評を得た。

 

「テンガロンハット」 沼田まほかる著(光文社文庫刊『痺れる』所収)

古い家に一人暮らしの「私」が庭で洗濯リングに髪を引っ掛けて困っていたところへ、通りすがりの青年が助けてくれた。自らを「巡回便利屋」と名乗り、植木の手入れや家の修繕を生業としている青年をお礼代わりに雇ったはいいが、家のあちこちに不具合を見つけては仕事を増やして居座るようになり…。
薄気味悪い善意の加速と、その果てに起こる意外な結末とは。

#日常に潜む恐怖 #サスペンスコメディ #ナルシシズム

 

「虎の肉球は消音器」 平山夢明著(集英社文庫刊『他人事』所収)

高校時代から仲の良かった三人組。「俺」たちにとって絶対の存在だったオカやんは自転車工場に就職するが、事故で片足を失ってしまう。一方結婚をして子供が生まれ順風満帆のブチ。そして中途半端な「俺」。ある日、ブチの出産祝いに夜の動物園に忍び込むが…。
淡々と描かれる高校時代から中年に至るまでのそれぞれの歩みと、皮肉な人生の番狂わせ。

#ヒトの不幸 #転落 #グロテスク

 

「炎上する君」 西加奈子著(角川文庫刊『炎上する君』所収)

30過ぎ独身の梨田と浜中は高校からの親友。その容姿からバカにされてきた2人はスタイルを頑なに変えないまま現在に至る。「大東亜戦争」というバンドを組み成功するも、それもいつしかこなすものとなってしまった。そんな2人が唯一感動出来るのが、銭湯と「足が炎上している男」だった…。
動けなくなってしまった者たちに訪れる小さいけれど大きな変化。

#女の友情 #疾走感 #バンド

 

「神様2011」 川上弘美著(講談社刊『神様 2011』所収)

くまにさそわれて散歩に出る。「あのこと」以来、初めて。
朗読の夜シリーズでも過去三度に渡り上演された1993年の著作「神様」が、2011年の福島原発事故を受け、新たに生まれ変わった――。
「日常は続いてゆく。けれど日常は何かのことで大きく変化してしまう可能性を持つのだ」と語る著者の静かな怒りと、それでも生きてゆくことへの決意が込められた一作。

#日常とは #原発 #変化 

 
 
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