| ●2004/09/01 Wed 女の夜・小説風稽古場日誌 最終回★☆桑原裕子 |
「想いは白い箱に閉じこめる、でも溢れるだろうと知っている」 日々は足早に過ぎ、気がつけばB子はまた、真白き四角い箱の中に立っていた。 かつてあったいくつもの柱や、布張りの本たちは消え去り、あの女たちも、もういない。 ある女は摩訶不思議な生き物に魅せられ、ある女はそんな不条理と恋に落ち、ある女は本当の出会いを知り、ある女はまだ遠くにある別れを見つめ…そしてある女は、それらの全てを抱えて、この場所に立っていた。 B子もまた、そんな女たちの一人であったことを、そしていつまでも、そんな女たちの一人であることを、全てが消えた真白きとうふの箱に、思う。 長い女の夜が明け、迎えたひさしぶりの朝。季節はオレンジの秋を迎えようとしていた。 B子とK.K.Tを助けてくれたたくさんの女たち、そして男たちに、感謝。 天 才・ヌキ様。お部屋改造計画ばりのアイディア満載照明を灯らせてくれたキョダ隊長殿。「レ」の字の雨を会場にふらせてくれた映像COJOPOM様。若き舞 台美術家・クマ&板様。タテヨコの横・ヨコタ様と、ぷれいすの横田様。桜使いのグッサン様、ビデオ使いのニシハラ様。写真とセックストークをありがとう、 アイカワ様。永遠の花嫁・カコ様。K.K.Tの妹たち、オムタン様。明かり隊・鈴村&桜子様。スウィートスマイルな受付隊・ノグチ様、イワカミ様、ジンコ 様、達平様。ラララのアルケミスト様。そして秘密実験箱の主、サイトウ様。 透明なヒト・水野美穂様。B子の想い人、三浦知之様。救世主、実近順治様。 そして全ての女達の憧れ、全ての男たちの恋人、麻生美代子様へ。 そしてそして。 蒸し暑い夜に恵比寿の隠れ家に集ってくれた、美しく、怖く、優しい、女たちと。 そんな女たちを、見つめ、守り、包む、男たちへ。 |
| ●2004/08/30 Mon 女の夜・小説風稽古場日誌 第十四回★☆横山真二 |
敵は「暑さ」 siteでやることが決まってから、暑さをどうするかという問題があがっていた。 しかも、今年は近年稀にみる猛暑だという。 なぜ今年に限って…という思いだった。 siteにはエアコンがない。この問題をどうクリアするか。 まず、最初に劇団で冷風機を購入。早速試してみるものの、なかなかどうして涼しくならない。 次に、劇団員宅の窓枠クーラーを持ってきて、設置してみる。 所詮6畳用、あの空間を冷やすことは出来なかった。 そして、考えついたのが一階上の(ガラス屋さんの事務所になっている)業務用クーラーから、ホームセンターで買った蛇腹タイプのダクトを何本も繋げ、地下に引っ張ってくるという作戦。 これは、なかなか良かったと思えた。キンキンに冷えるまではいかなくてもなんとかGOサインが出た。 しかし、いざ本番を迎えてみると異常なほどに温度が上がっていった。 人の体温というのを侮っていた。思ったよりもこれが凄く、空間に一人また一人足を踏み入れる度に温度は上がっていくという感じだった。 初日に観に来られたお客さんは特に辛かったと思います。 この場を借りて深くお詫び申しげます。本当にすいませんでした。 次の日から緊急ミーティングが繰り返された。 色んな案を出し合い、みんなで見えない空気の流れ、道筋を考えた。あるものは一角に研究所みたいなスペースを作り除湿機の機能を徹底的に研究していた。 以外にも一番効果があったと思われるのは、窓を開けるという原始的な作戦だったかもしれない。 そして、本番前まで誰一人として、空間に立ち入らない。これを徹底した。 そのかいあってか日に日に涼しくなっていった。(というよりは暑くなくなっていった) 本当に色んな意味で汗をいっぱいかいた夏でした。 公演終了後、家で体重計に乗ってみる。 5キロ太っていた… なぜ…。 ![]() |
| ●2004/08/25 Wed 女の夜・小説風稽古場日誌 第十三回★☆成清正紀 |
「年下の彼、年上の彼女」 斜め前のベッドに高校生が入院し てきた。バイク事故による皮膚移植が必要なほどの足の骨折、肩の脱臼、ムチウチ。オレなんかより遥かに重症だ。高校生最後の夏休みのほとんどをベッドの上 で過ごすことになるだろう。「辛かろう。」と案じていたが、本人はとても明るくPS2を病室に持ち込んで 「なりさん『ウイイレ』(サッカーゲーム)やりましょう!」やら 「なりさん『桃鉄』やりましょうよ!」 などと誘ってきてくれる。しかし自分はとてもそんな気分になれずその度に断った。 ちょうどひとまわり下の濱田くんにはとても可愛らしい彼女がいて、毎日見舞いにやってきてはカーテンを閉めてイチャイチャしている。 「いやー、入院って楽しいっすよね〜!」 若さか。なんか、キラキラして見えるよ17歳君。濱田くんが誕生日にくれた、自分では買わない様なキャップを被ってみると 「似合いますよ。」 と言ってケラケラ笑った。本当に似合っているのかどうかは分からなかったが退院の日にはそれを被って帰った。 遅れて稽古に合流すると麻生さんがいた。オレよりもひとまわりもふたまわりも年上の先輩はいつもニコニコしていて、元気で、たまーにこどもみたいにウトウトしている。その寝顔がとても愛らしい。 「メールなんていらないわよ。電話とお手紙で充分。」 という麻生さんと絵文字でいっぱいの解読不可能なメールでいろいろ報告してくれる青年。二人とも話をしているだけで、一緒にいるだけでつよく刺激を受ける。 怪我によっていろいろ不自由はしたが、とても素敵な先輩と若造に出会えた夏だった。 ![]() |
| ●2004/08/22 Sun 女の夜・小説風稽古場日誌 第十二回★☆三浦知之 |
「ケイ・ケイ・ティ」 夏の甲子園大詰めの中、とある団体がとある場所で大詰めを迎えている。オレはその団体に参加しているものだ。その団体は当初途中合流したオレを何くわん顔で迎え入れてくれた。 何とか皆に追い付こうと必死だったけど空回り。けどやさしいまなざしで見守ってくれている。メンバーそんな感じでいい雰囲気で稽古をさせてくれた、感謝してます。 後、共演者がオレを支えてくれているのがすごくよく解る、さすがだ。頼ってる訳じゃあ無いんやけどフォローがいい。ありがとう。やっててすごいいいシーンになってるのが感じられてすごい楽しい!ラストの顔もかなり素敵ないい顔してる。 回が減っていくのがしみじみ伝わって来て淋しい感じになって来てる。もっとやりたい!これが今思う素直な気持ち。 また一緒に出来る機会があれば嬉しい。文で気持ちを伝えるの が難しいけど、『気さくで・企画が面白く・楽しませてくれる』そんな団体だった。 ![]() |
| ●2004/08/22 Sun 女の夜・小説風稽古場日誌 第十一回★☆川本裕之 |
「記録的猛暑」 『暑い』 8月真っ只中、今年は記録的猛暑が日本を襲っている。 僕はsite(今回の劇場)の前のコンビニで日に3度は飲み物を買う。締めて1.5リットル。 僕以外の公演関係者も、もちろんこのコンビニを使っている。一時的ではあるが、ちょっとした経済効果があるはずだ。 小屋に入って3日目か4日目だったか、ある女性公演関係者の一人が、氷だけがはいったボトルをコンビニで買ってきた。 そしてそのボトルにジュースを入れて飲んでいた。ボトルにはふたもついていて、しかも氷なので冷たさが持続しやすい。女 性陣のあいだで瞬く間にブームなった。コンビニでは普段以上の売り 上げがあったはずだ。 ある時在庫が少なくなったため、そのボトルが新たに入荷されていた。すごい量だった。 「店長さん、ぼくらは8月23日で恵比寿を発ちます。氷入りボトルたくさん売れるといいですね。」と心の中でつぶやいた。 ![]() |
| ●2004/08/17 Tue 女の夜・小説風稽古場日誌 第十回★☆実近順治 |
「大人とケイコと3分前」 彼女が私の腕を取り、こう呟いた。 「つぎ、どこかしら?」 彼女に初めて会ったのは、前年の冷夏の反動か、例年にない暑さに見舞われた東京で、朗読公演の顔合わせの為向かった、小さな飲み屋の席での事だ。 目深にかぶった小さな帽子の下から、潤いに満ちた愛らしい目をこちらに向けながら「麻生です」と名乗る彼女は、とても初対面とは思えない、懐かしい「何か」を感じさせた。 すぐさま私も名乗り返したのだが、彼女はそれには答えず、照れ隠しにサクランボの様な小さな舌を出して笑ってみせた。 そんな彼女が今、私の腕を掴んで聞いてきたのだ。 「今 はですね・・・」。そう答えながら、彼女の手が緊張しているのを感じる。このか細い手は、今までどんな男の腕を握ってきたのか。その手が私の腕を掴んで離 さないのだ。ゆっくりと伝わってくる温もり。それはまるで、砂漠に咲く小さな花のつぼみから今にも零れんがばかりの、一滴の水の様に愛おしいものだった。 私は、そのつぼみの上の水滴を零さない様ゆっくり彼女に寄り添って、こう答えた。「私についてくれば、大丈夫ですよ」。 いよいよ出番と言う時、ちょこんと私の後ろに付く彼女の姿があった。 先程腕を掴んできた時の様な、どこか少女のような不安げな表情はすっかり消え、まるでこのままハイキングにでも出掛けるのかな、そんな気さへした。 「それでもいいかな」などと考えている間もなく、出番が来る。思わず私が振り返ると、彼女が微笑んだ。その微笑みは、私の心を優しく撫で回し、そしてゆっくり背中を押し出してくれた。 彼女がついてくる足取りを想像しながら、私は、ゆっくりと先に進む。「大丈夫ですよ」。彼女に呼びかけるかのように、そう心の中で呟いてみる。彼女の髪をなでるように、一歩一歩愛おしく、狂おしく。 おかしいと気付いたのは、舞台中程まで進んだ時だ。後ろについていたはずの彼女が、あらぬ方向からいきなり視界に入ってきたのである! 「あれっ?」と思うまもなく、彼女は進んでいく。おかしい。順当に行けば、こちらから出て、彼女もこちらの方向へ行くはず・・・。 そう、彼女はすっかりハイキング気分になっていたのである。 それも私ではなく、「私」みたいな誰かと・・・。 毎日が、本番です。 ![]() |
| ●2004/08/14 Sat 女の夜・小説風稽古場日誌 第九回★☆水野美穂 |
「橋本は夜の10時」 稽古があるので橋本へ向かっている。 橋本。京王線の終点であり、成清くんの住んでいる街。 これまでにも何度か行ったことがある。初めて訪れたのは、たぶん今から7年程前。その頃は駅前にショッピングビルなんて無かったし、静かな住宅街といった感じだった。 数年前から駅前の印象がガラリと変わった。実際には何年も前から計画され、少しずつ変貌を遂げたのだろうけれど、たまにしか訪れないわたしには驚くべき変わりようだった。 都心から離れているだけあって、温度が多少低い気がする。空気もキレイで土の匂いがするような(そこまで違わないと成清くんは怒るかもしれないが)気さえするから不思議だ。 稽古が終わり、新宿までみんなで向かった。カメラで写真を撮ったり、景色を見たり、なんだかんだと話していたら新宿に着いていた。 向かうときはあんなに長く感じられた道中も、帰りはあっという間だった。 たまには遠くの稽古場もいいものだなとひとりごちる。 楽しい気分で家路につこうとした時、たった一日で残額が少なくなったパスネットを見て、ちょっとだけ哀しい気持ちになった。 ![]() |
| ●2004/08/12 Thu 女の夜・小説風稽古場日誌 第八回★☆大枝佳織 |
「胃袋も夏めいて」 ノースリーブ、キャミソール。 女の二の腕は揺れる。 猛 暑という猛暑の中私達は活力の源「食」へそれぞれのこだわりを見せる。稽古合間の食事の時間、見渡せば実に様々な食物が広がる。暑いさのせいか、最近は麺 類を食べている人を必ず目にする。そんな中いつでも変わらず大量パンと行動を共にする馬場くん、パン好きかなの節約なのか分からないが、彼の絵を描けと言 われたらきっと私は片手にパンの袋も描いてしまうだろう。 さて、今日はみんなの胃に何が納まるか。いつも美味しいもの購入してくる水野美穂が気になる。 昼過ぎ、稽古場に着くと早速、田村友佳が納豆そばを片手に作業をしている。今日の麺の人はこの人か。 昼 の稽古が終わり夜の稽古場への移動。さあ、宴の始まり。先陣を切って田村友佳がそばを食べる。よく見ると先程の納豆のもの。分けて食べる派か。そして私が 弁当の中身を思い出していると聞き捨てならない言葉が。馬場くん、富士そばに行くという。パンは!ねえ、パンは?!心弾ませて富士そばに向かう背中を見な がら私は問いかけた。結局今日はオリジン弁当が近くにあったのでみんな吸収された。水野もそこで買った鯖を美味しそうに食べるのだった。 ![]() |
| ●2004/08/07 Sat 女の夜・小説風稽古場日誌 第七回★☆野澤爽子 |
「サバとサンマ」 本番まであと10日と迫った日の稽古帰り、稽古場近くの居酒屋兼定食屋に立ち寄った。 どのような「兼ね具合」かというと、冷や奴と書かれたメニューの横に唐揚げ定食と書かれたメニューが並んでいる「かなり適当な具合」である。 店の店主も一風変わっており、上機嫌な様子で冗談を言いながら席に案内してくれたかと思えば、次の瞬間にはぶっきらぼうな声で「注文」とだけ言い放ち、「何にしようかな?」などと躊躇していると、ムッとしたような顔で厨房の奥へ引っ込んでしまう。 仕方なく席を立ち、厨房の奥を覗き込みながら、定食を注文した。一緒にいた佐藤くんはサバ定食を、私がサンマ定食を「大丈夫だろうか・・」と、不安になりながら注文した。 しかし、そんな不安はすぐに消し飛んでしまった。サンマはもちろん、ごはんと味噌汁、付け合わせの切り干し大根にいたるまで、どれもとても美味しかった。佐藤くんのサバもとても美味しそうであった。 相変わらず、店主のご機嫌なのか不機嫌なのか計り切れない様子が気になったが、私の腹と心はいつの間にか穏やかに満たされていた。 本番まであと10日と迫っている。 店を出て、ふと空を見上げると、月が出ていた。先ほどのサバとサンマの香ばしい匂いが月に向かって上っていくような気がした。 ![]() |
| ●2004/08/04 Wed 女の夜・小説風稽古場日誌 第六回★☆原扶貴子 |
『扶Q正伝、或いは狂人日記』 一、 或る女がいた。扶Queiと呼ばれていたが、「Quei」部分の漢字は定かでない。従って「扶Q」と表記す。 二、 扶Qは驚愕した。 劇団の稽古帰り、お気に入りの写真家の作品集を何気なく手に取ると、それは金太郎飴のごとくどのページも彼の妻の写真だった。「すわっ、結婚とな?!」 1ページ目の写真には「1999年8月29日、この時はまだ僕らの未来を知らなかった・・」のようなコメントが。彼女をとった最初の写真らしい。 8月29日といえば扶Qの誕生日ではないか。扶Qは目を剥いた。 「1999年、おらは何してたかな・・・」指折り数えても、到底指は足りない。その妻は職業モデルで、劇団の主宰・桑原嬢とは高校時代に同級生であったらしい。 扶 Qはあるかなしかのような因果を嘆き、天に向かって唾を吐いたが、唾は顔に落ちてくる。天まで馬鹿にするかと拳を振り上げたが、「彼はおらと結婚する運命 でもあったはず」と思い付くと嬉しくなった。その途端、この邪な考えのせいか、どこからか愚連隊が現れて棒でしとどに殴られた。 三、 「最近劇団は稽古ばかりしているなぁ」 扶Qよ、当然だ。現在稽古は大詰めを迎えつつあるのだ。 今日の稽古では読み本を離れ、相手役の呼吸を感じてみる事をした。 扶Qの相手は馬場君だ。向かい合って立つ。「好きな者同士が別れる、その最後の握手」というお題が出た。大げさな表現は必要なく、ただ相手の表情やらを丁寧に読み取り、相手に反応を返すのだ。 扶Qの頭には今まで通り過ぎていった男たちが甦る。感情移入しやすい質なので、眼前の馬場君への想いが止まらなくなった。最初こそ弁髪頭の扶Qに戸惑い気味の馬場君であったが、すぐにきめ細かな想いを真摯な様子で返してくれる。 「舞台の上で、こんな風に心通う瞬間がいいんだよな」と扶Qは珍しくまともな事を思った。 稽古とはいえ余りにも切ない表情を見せる馬場君に、「こいつもおらに惚れたな」と扶Qはほくそえんだ。 するとその途端、いつもの愚連隊が稽古場に現れ、扶Qは棒で殴られた。おかげで稽古は一時中断してしまった。 四、 「朗読公演楽しみだな・・・」 扶Qは夢想し笑った。その刹那に殴られる事を覚悟したが、愚連隊はやってこなかった。かわりに大きなくまが背後に立っていた。 ![]() |