『水に流せばすむ事だ』



2004/02/15 Sun  紙様

お芝居というものは、高い集中力・緊張感を要する。それを生む為に、舞台に上がる前に、役者は様々な事に取り組んでいる。

昨年12月、フラジャイル「BRIDGE」の通し稽古の前だった。台本を読み返す者。音楽を聞く者。静かに目を閉じる者。また、いつも通りおしゃべりを楽しむ者。人それぞれだ。
いろいろ居たが、みんな肝心な事を忘れている。
「トイレは済ませたのか?」
フフフッ(笑)!
俺は,いたって冷静だぜ!まだ時間はタップリある。今のうちにトイレを済ませよう。頭の中で反復稽古をしながら、トイレで用を足す。
「はあーー!すっきりだぜ!」
これで万全の態勢で通し稽古に向かえる。精神統一!!
「さあ行くぞ!さあ・・・。んんっ?」

・・・・・・紙がない。

「うわあ!!か、紙が!!・・・・・・ふうー、落ち着け。」
お芝居というものは、高い集中力・緊張感を要する。

俺はいたって冷静だ。慌てるな。こういう時の為に、“補助のトイレットペーパー”が用意されている。おそらく、上の方の棚にあるはずだ。
フフフッ(笑)!上の棚にトイレットペーパーが・・・・・・、
「なーーーい!!」

落ち着いて、個室内を見渡した。どこにもトイレットペーパーはなかった。通し稽古の時間は迫っていた。悔しい。何故ならば、そんなにトイレに行きたくなかったのに、時間に余裕があって、念の為にトイレしに来たのに、ここで紙がない!!
お芝居というものに、高い集中力・緊張感なんて、関係ない!!
今、このハプニングをどうやって脱出するかだ!

トイレットペパーの“芯”でだけではすまされない。
「うおおーーー!!どうすればいいんだぁぁぁ!!」

しかし、この日の通し稽古は、何気ない状態で終了した。僕もいつになく集中できた。僕は日々祈りを捧げている。この世には、“紙様”が存在している。



[トイレ掃除・クイックルワイパー]
“除菌効果”
が付いているせいか、“肛門”がヒリヒリした。そのおかげなのか、背筋がピンとした。この日の通し稽古は、姿勢のいい役者だった。

役者は、舞台に上がる前の時間の過ごし方が重要だ。


2004/01/18 Sun  不良の女

高校に向かう電車は、いつも同じ時間同じ座席で、僕の前にはいつも“ヤンキーの高校生カップル”が座っていた。そのヤンキーカップルは優先座席に堂々と座り、茶髪でパーマのかかった不良の男の膝の上に、女はお姫様だっこの状態で座っていた。
そして僕が夢にまで描いている、あの大人の、あのいやらしい、なんと!あの“キッス”をいつもしていた。

ひ弱な俺様ちゃんは、“ケンカの匂いがしそうな場所”は極力避けるのだが、そのカップルを見たいが為、勇気を振り絞っていつも同じ時間に電車に乗り、同じ座席に座っていた。
でも、じろじろ見てはいけない!不良の男にからまれてしまう。だから何気なく、チラッとだけその“キッス”を見なくてはいけない。それは心得ていた。そして万が一、
男「何、見とんじゃ!こらっ(怒)!」

と、不良の男にからまれたとしても、精一杯の低姿勢で、弱々しく、とぼけて、内股で、病弱に、
若狭「えっ?なんですか?見てませんよ。コホンッ、コホン(咳)。」
と、絶対に闘う姿勢を見せないで、セリフを言う用意もしてある。一発くらい殴られても、勿論抵抗してはいけない。だって相手は茶髪でパーマで怖そうなんだもん。

そんな恐怖心とはうらはらに、僕は同じ座席に毎日座った。
テレビでも映画でもない、生の本物の“キッス”を見る為に。

優先座席はステージで、僕は観客だった。

でも、その“ステージ”には千秋楽があったらしい。毎日繰り返されてきた、“公衆の面前でのハレンチな行為”は終演していた。
一途なヤンキーの恋は終ってしまったのか、ある日から男は居なくなり、その優先座席には“不良の女”一人で座っていた。
貧しい心を持った俺様ちゃんは、他人の不幸は面白くてしかたない。
若狭「へへっ(笑)!さては別れたな!お前ら、あれだけ“キッス”をしてたから、一人になると恥ずかしいだろ!」
と、寂しげな不良の女を心の中で笑っていた。

しかし、ある日、いつものように一人で座っていた不良の女が、俺様ちゃんの方に近寄って来た。そして、
不良女「あの、すいません。」
若狭 「あっ、はい。」
不良女「天王寺駅で降りてますよね?一緒に行ってもいいですか?」
と、声をかけて来た!なんと!俺様ちゃんは、その不良の女に好意をもたれていたのだ!
いや、これは罠だ!
あの“茶髪でパーマの男”が、“ひ弱そうな俺様ちゃん”から、金銭的に何かを奪おうとしている罠だ!と思ったが、どうやらそうでもないらしい。
あまりにものハプニングに、俺様ちゃんは完全に瞳孔が開きっぱなしだった。
それから、3日間くらい、その“不良の女”と4〜5駅間の間だけ、少しだけ会話を交わしたが、それ以降は俺様ちゃんは、電車に乗る時間を変え、乗る車両を変えた。
・・・・・・勿論、怖かったからだ。いや、男が怖かった訳ではなく、僕からすれば、彼女は“大人すぎて”怖かった。
だって、あの“キッス”の女。
あの彼女は、“キッス”をしながら、俺様ちゃんを見ていたのか?!

しかし、一番気になるのは、彼女は、
“どんな男性がタイプ”
だったのだろうか・・・・・・?


2004/01/04 Sun  Budweiser

浪速高等学校を卒業し、仲間達はそれぞれの進路に向かっていった。就職する者。進学する者。浪人する者。会えない訳ではないが寂しいものだ。
僕は大阪で浪人する事になったのだが、『やぶチン』というあだ名の藪野(やぶの)君は、進学で東北地方に行く事になった。
みんなでバカやって、酒飲んで、遊んだ3年間。仲間が一人東北地方に行ってしまう。
僕は、何か“心のこもったプレゼント”を渡したかった。いろいろ考えた結果、やぶチンに似合う帽子(キャップ)を購入し、帽子の“つば”の裏の緑色の部分にマジックで
【親友よ!頑張れ!199●年!〜】
みたいな言葉を書いた。

別れの時が来た。東北地方へ向かうやぶチンを見送りに、バス乗り場には、仲間数名と、やぶチンの“彼女”も来ていた。みんな寂しさを紛らわす為か、他愛もない会話が続いた。

バスがやって来た。バスの扉が開いた。

みんな「頑張れよ!」「いつでも帰って来いよ!」等、少し照れながらも、お別れの言葉を投げかけた。
僕は、プレゼントの帽子を用意していた。

しかぁ〜し!ただ普通に渡すのでは、芸がない!
何か“ユーモア”を交えた言葉と一緒に、渡そうと思った。



やぶチンは、“ファッションセンス”がそんなには良くなかった。いつも、ビールのバドワイザーの柄が大きくプリントされており、その中心部には『Budweiser』と大きく書かれた、あまり“イケてない”帽子(キャップ)を被っていた。だから僕は、“それに変わる帽子”をプレゼントに選んだのだ。
その日もやぶチン『Budweiser』を被っていた。僕なりの“冗談”を交えて、プレゼントした。

若狭「やぶチン!これ(帽子)プレゼントや!そんな“ダサい”帽子(バドワイザーの帽子)ばっかり被っとらんと、この帽子被り!」

やぶチン
は、僕の渡した帽子の裏のメッセージも見て、感動しているようだった。やぶチンは笑顔を浮かべ、泣きそうで、僕ももらい泣きしそうだった。僕は、声に出すと泣き声になりそうだったので、心の中で呟いた。

若狭「(頑張れよ!やぶチン!)」
やぶチン「・・・・・・あっ、あのこの帽子(バドワイザーの帽子)、彼女に貰ってん。」
若狭「えっ?・・・・・・えっ!!?」

やってしまいました!やぶチン
は感動していたのではなく、困っていたのだ!やぶチンの“彼女”は俺の真横に居た!彼女のプレゼントだった『バドワイザーの帽子』を、僕は公の場で、「ダサい!」と明確に言ってしまったのだ!

若狭「ごめん!いや、そういうつもりじゃなくて!いや・・・・・・あの・・・・・・その・・・・・・。」
彼女「う、ううん。い、いいのいいの。だ、大丈夫やから。私もそっちの帽子の方がいいと思うし・・・・・・。」
若狭「ホンマにごめん(泣)!」

やぶチン
は、ひきつった笑顔で笑っていた。バドワイザーの帽子は決して脱がなかった。

若狭君、“ユーモアのセンス”なしです。

2003/12/21 Sun  若狭辞典

【面食い】 えり好みして、顔立ちの美しい人を好むこと。また、その人。器量ごのみ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「だよねぇ〜?!」
20代前半、彼女居ない歴−5年−ほど経過していた頃、友人知人に
「彼女が居ないのは、面食いだからじゃないの?!」
と、ちょっと“嫌な口調”でよく言われたものだ。中には
《5年彼女が居ない=ホモ》
と、“女の子大好き若狭っち”にとっては、とんでもない仮設を立てる者も居た。また“女の子大好き”を強調するところが怪しいと、ますます“ホモ説”を唱える者も居た。・・・・・・いや、そんな話ではない。“面食い”の話だ。

実際、5年彼女が居ない寂しさと苛立ちもあって、この
「面食いじゃないの?!」
の発言によく腹を立てた。
「俺(私)は“面食い”じゃないから、性格で選ぶから。」「価値観で選ぶから。」「話しやすさで選ぶから。」
など、人を好きになるにはいろいろな理由がある。いや、理由なんてない。
なんか一般的にか、[面食い]という言葉自体が嫌なイメージを持っていて、
「若狭君は、面食いすぎなんだよ!」
と言われると、カチッ、カッチン〜!とくる。だから“面食い”と言われると、
「じゃあお前らは、面食いじゃないのか!面食いってなんなんだよ!」
と、心の中で暴露していた。心の中で問題提起していた。心の中でぶっちゃけトークしていた。


例えば、「松嶋菜々子」「山田花子」が居たとする<敬称略>。二人とも知り合いだとする。
僕が山田花子に恋をしていて、特に“顔”がすごい好きで好きでたまらない。
松嶋菜々子とは、話易いし、いい子で、なんだったら彼女はどうやら僕の事が好きだ。
そして松嶋菜々子に告白される。
松嶋「若狭君、私と付き合ってくれない?」
若狭「は、はい!喜んで!」

・・・・・・いやいや、想像して興奮して話がずれた。
もう一度、
松嶋「若狭君、私と付き合ってくれない?」
若狭「うーん、ななっち、ごめんやけど、他に好きな人が居るのよ、気持ちはありがたいけど・・・・・・」
と、断ったとしよう!
だって山田花子の“顔”が好きで好きでたまらないんだもん。
しかし、この松嶋菜々子とのやりとりを、僕に“面食いだ”と断定した友人知人に報告したら、同じように、
「若狭君は、面食いすぎなんだよ!」
と言うだろうか?いや言わないだろう。
でも、これも明らかに“面食い”行為だ!

逆に、松嶋菜々子に恋していて、山田花子に告白され、
山田「若狭君、私と付き合ってくれない?」
若狭「うーん、花ちゃん、ごめんやけど、他に好きな人が居るのよ、気持ちはありがたいけど・・・・・・」

これを、友人知人に報告すると、
「若狭君が彼女が居ないのは、面食いすぎなんだよ!花ちゃんと仲良かったじゃん。人を好きになるのって顔だけじゃないよ!」
と言うだろう。

んんっ?話がまとまりそうにないぞ・・・・・・、ええっと、
【面食い】という、“人を顔だけで好きになる人”みたいな、嫌なイメージの言葉を人に投げかける時は、“面食い”の意味を知り、気を付けないといけない。じゃないと、5年彼女が居ない人は、その寂しさと苛立ちで、カチッ、カッチン!!となってしまう。

あなたは、面食いですか?
うわお!投げかけちゃった(照)。


(山田花子さん、大変失礼しました。更なるご活躍を祈っています。)

2003/11/16 Sun  青春<アオハル>ポーズ(終わり)

2003年11月3日 文化の日
この日をもちまして、わたくしの『青春<セイシュン>』が終りました。

お腹をすかして、“焼き肉の食べ放題”に行ったのですが、途中から“お肉”が食べられなくなりました。体がもうお肉を欲しなくなったのです。
いつもなら[これくらい食べてる。][これくらいは食べれるだろう。]という量の想像よりかは、半分くらいでした!
まだ、お腹がいっぱいになった訳ではなかったので、それから野菜、しいたけ、とうもろこし等を、取りに行きました・・・・・・。

その日は、文化祭の打ち上げで、店内には高校生がいっぱいで(いや僕ら以外はほぼ高校生だった)、彼らはそんな僕に、“若さ”を存分に披露してくれた。商品(お肉や、野菜、デザート等)が陳列されてあるコーナーで、

高校生「お前、お肉取りすぎだって(笑)!」
高校生「(店員に)すいません、ここのお肉もうないんですけど!」
高校生「ニック!ニック!肉!肉!にくじゅうハチッ!」
高校生「ちょっと、俺ら目立ちすぎだって(笑)!」
高校生「はあ〜、若いっていいなあ〜!」
高校生「ちん毛、ボーボー!」
高校生「はあ〜、いっぱいお肉食べて、早く大人になりたいなあ〜!」


僕は高校生を掻き分け、野菜を取っていました。
若狭「もう肉は食えない(涙)。」
肉コーナーは高校生でいっぱい。野菜コーナーは僕だけ。感情表現の“喜怒哀楽”“怒”が欠如している僕も、彼らに嫌悪感を抱き、気が付けば、彼らをずっと睨んでいました。お前らうるさい。早く店から出たい。

泣きそうな思いで店から出ました。
千代の富士「体力の限界。」と言って、涙を流し“相撲界”を去ったように、
僕は「肉食の限界。」とつぶやき、呆然として“若さ”に終わりを告げました。


2003/10/20 Mon  KING OF ROCK’N’ROLL

開演30分押し。演劇なら大ブーイングだ。平成15年10月11日、幕張メッセでオールスタンディング。僕はステージから一番近いエリアに居た。“ゴッドファーザー〜愛のテーマ〜”が、会場に響き渡り、4人は、“最後のステージ”にやってきた。
と同時に、観客全員が、ステージの前まで詰め掛け、僕も、もみくちゃにされて前の方まで連れて行かれる。
若狭「(うわあ!何?!押さないで!痛い!痛い!)」
ミスチルの穏やかなコンサートには何回か行ったが、こういうコンサートに行くのは初めてで、俺様ちゃんはドッキンしたが、情けない声は出せず、俺様ちゃんも負けじと、前に詰め掛ける。
若狭「(前に、前にっと、ちょっとごめんなさいねえ。えい!・・・・・・えい!っと。)」
みんなと叫んだ。
若狭&みんな「チバぁーーーー!!チバぁーーーー!!」
みんなと、拳を突き上げた。曲が始まった。
「THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」
周りのみんなに殴られるんじゃないかと怖かったけど、みんなと狂った様に飛び跳ねた。4人は最高だった。最後のツアーの最後の幕張メッセ。なにか挨拶でもあろうはずが、最初から最後まで、演奏しっぱなし!曲の間に「ありがとう!」とか短い言葉だけ。かっこいい!大好きだぜミッシエル。ありがとうミッシエル!
「今までで、一番すげえぇアルバムが出来た!まあ当たり前なんだけどね。」

とアルバムを出すたびに毎回言う。常に全力疾走。ミッシエルは常に新しい。解散は終わりじゃなく、明らかに始まりだろう。突っ走り、その先に彼らは進む。その先には、常に突っ走ってたからこそ、行けるのだろう。“ボカスカジャン”も見習って欲しい。


「エレクトリック・サーカス」
曲:THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
詩:チバユウスケ

俺達に明日がないってこと
はじめからそんなのわかってたよ
この鳥達がどこから来て
どこへ行くのかと同じさ
エレクトリック・サーカス 燃えあがる空
澄みきった色の その先に散る
エレクトリック・サーカス
その先に行く
夜になってから花は咲く


ミッシエルの激しい曲を聞いていると、心が落ち着く。静かになってゆく。僕は酔っ払って家に帰ると、すぐに寝てしまうのだが、以前、酔っ払って家に帰った時、かっこつけてウイスキーを飲みながら、ミッシエルのアルバムを聞き始めた。普通なら寝てしまうのに、アルバムが終るまで全部聞いた事があった。

物販でミッシエルのTシャツとキャップを購入。NHKの「トップランナー」でボーカルのチバユウスケがキャップを被っていて、かっちょいい!と思っていた僕は、翌日、キャップを被り、劇団員の田村が客演している「つめきり」の公演を見に行った。
若狭「へへへっ!俺もロッカーだぜ!ベイベー!」
と調子に乗っていたら、青年団の知り合いの女の子に、
「野口五郎みたい。」
と言われた。彼女は更に、
「いや、いい意味で!」
と言ってくれた。

先に行けない。

若狭「エレックッ♪!トゥリーーイック・サアーカス♪!
そのー♪、さーきに行ーくーー!!♪」

THANK YOU THEE MICHELLE GUN ELEPHANT



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