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2005年07月 アーカイブ

2005年07月04日

「さ」 賽は投げられた(さいは・なげられた)その1

訳あって、今朝早く私は飛行機に乗り広島に飛んだ。
朝もや煙る空港を、ハイヒールをカッカと鳴らし、キャリーバッグ片手に颯爽と闊歩する。それはさながらスチュワーデスのフライトの様。数時間の空の旅を終えれば、ウィンドウショッピングと旅先の恋が始まるのだ…。
なんつって、本当はただの撮影旅行。グリングの合間を縫って、とある映画のロケに行って来た。ついでにハイヒールなんか履いてないし、キャリーバッグは1500円で購入したやっすい奴だ。撮影旅行と言えば格好良いが、1シーンちょびっと出してもらう程度のものなので滞在時間は短く、しかもグリングの稽古オフを狙っての撮影なので、朝イチに出て出来ればその日のうちにトンボ帰りという、何とも過酷なスケジュールの旅なのである。
それでも朝早くに空港のカフェで朝食を取り、マネージャーと電話をしながら一人搭乗口へ向かっている時は、「コレって昔私が憧れた光景じゃない…?」などと舞い上がり女優気分に浸った。カフェで食べたビーフカレーは旨くもないのにバカ高くて愕然とし、搭乗時は遅れまいかと一番最初に入り口の前に並んでしまうあたり小心者で不慣れな感は否めないワケだが、ともあれ無事に飛行機に乗り込み、短い空の旅を満喫していたのだ。
ところが。そこからは波乱の一日のはじまり。そもそも早朝出発のため昨夜から一睡もしていない状況であったことを頭に置いてから、今日の一日をお話ししたい。
私は旅行の際、いつも入念に準備してしまう物がひとつある。それは漫画や雑誌、文庫本といった読み物。下着や化粧道具はしょっちゅう忘れて出かけるクセに、読み物だけは絶対に欠かせず、いつも以上の分量を持って出かけるのだが、それは移動時間やホテルでの滞在中などに間が持たないからだ。旅行好きと口では言うが、窓の外をのんびり長め、つかの間の安らぎに浸る…なんつう余裕を持った楽しみ方の出来ない、「退屈」が怖いっつう、本来旅行には不向きな私である。旅の途中で読み物が途切れるのが恐怖ですらあり、普段は読まない様な分厚い本も旅行の時は大量に持って出かけるのだ。

「さ」 賽は投げられた(さいは・なげられた)その2

今日は、グリングで共演中の腹太鼓役者・辰巳に漫画「きりひと讃歌」を借り、友人にもらった東野圭吾の分厚い本「さまよう刃」を鞄の底に沈め、ついでに本屋で漫画家たちのインタビュー本を購入し、更には若貴問題を知るべく売店で週刊現代も追加購入して準備万端で出かけた。そんなわけで飛行機に乗り込んだ時は、きりひと讃歌の面白さに不眠も忘れて熱中しており、いつもとはちと様子の違うスチュワーデスのアナウンスを流し聞きしていたのである。
「本日は天候不良のため、広島空港に着陸出来ない可能性がございます…」
さて、手塚治虫の名作を感動のなか読破し、インタビュー本の内田春菊編を読み終えた頃、ようやく徹夜明けの眠気が襲ってきて私は毛布に埋まり仮眠を取った。やけに飛行機が揺れていたが、朦朧とした頭にはさほど響いてこず、「もし墜落とかになったら羽の近くにいる私はあぶねえのかな…」などと薄ボンヤリ考えながらまどろんでいた。まどろみの中でパイロットのアナウンスが、
「只今より広島空港へ着陸するか試みます…」みたいなことや「やっぱり霧が深くてだめだったので福岡空港へ向かいます…」というようなことを言っているのを聞いたが(もちろん本当はもっとちゃんとした説明だったろう)、パイロットが喋るっていつもこのことだっけとかのんきな思考を巡らせつつウトウト。
そしてどれほど眠ったのか。私は福岡空港に来てしまったのだ。(イヤ、そう言ってたんだけど)
目が覚めて真っ青。広島に到着予定の時間はとっくに過ぎており、つまりは撮影予定時間も過ぎている。慌ててマネージャーに電話し、慌てすぎて飛行機の中で電話したのでスチュワーデスに怒られた。飛行機を降りればムッと南国の熱気が顔を覆い、改めてここが福岡であることを知る。事前にアナウンスがあったときは、漫画に夢中でオマケに頭が半分寝ぼけていたので、福岡と広島がどれほど距離のある場所かわからなかったのだが、スチュワーデスが「こちらでバスをご用雨しております。広島までは3時間半から4時間です」と言われ、いよいよ蒼白になってしまった。

「さ」 賽は投げられた(さいは・なげられた)その3

しかし、蒼白&未だ寝ぼけで朦朧とした状態で話を聞いていると、「電車で行かれる方には現金をお渡しします」。どうやら新幹線で向かう手もあるらしい。あたふたと交通代を受け取り、地下鉄と2つの新幹線を乗り継いで、その間も、豪雨のため運行が遅れてると言って乗り換えごとに待たされ、ようやく撮影場所に到着することが出来たのは1時過ぎだった。
バス、飛行機、地下鉄、新幹線とあんまり多くの電車を乗り継いでいるうち、私は何をしに来たのかだんだんわからなくなっていた。「こりゃあ役を降ろされるかもしれん」とも思ったけど、以前成清が、「慌てたって着くもんはつくし、着かないもんは着かないんだから焦るのは無意味」と私に諭してくれた言葉を思い出し、こうなった以上慌てず騒がず断行せよと己に言って励ましつつ、「嗚呼、この辺が尾道か」などと車窓の景色に目をやったりして今更ながら旅の原点に立ち返ってみたり。
幸い役を降ろされるようなことはなく、皆心配してくれて、私がメイク中再びおそう眠気で白目になっていることも甘んじてお許し頂き、撮影は無事終了した。
寝れる…これで寝れるんだわ…。これは「プロゴルファー玲子」で玲子と大沢逸見が「どっちが先に寝るかの真剣勝負」をした時、ようやく勝負がついたときの玲子の台詞だ。私は今すぐホテルのベッドでパリパリの浴衣を着、薄い毛布に包まれ眠りたかった。ところが、旅はまだ終わらない。グリングの稽古が明日もあると言うことを知っているのでスタッフさんが気遣ってくれ、「今からでも帰れますよ」とそのまま日帰りすることになったのだ。
結局夕方にはまた2つの新幹線と、JR線に4時間揺られ、ふわふわした足取りのまま家路に。今日一日の3分の2を私は乗り物の中で過ごし、何か色んな意味で夢のような一日であった。

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