さとがえりの稽古終了後、飲み屋からの帰り道コンビ二に寄る。
カライーカ(お菓子・好物)と柿ピー(おっさん)と氷結ゼロをカウンターに置く。
大きなマスクをつけたメガネのお兄さんがするするっとレジについた。
「カライーカと柿ピーと氷結っと。」
言わなくてもいいのにな。
バーコードを当てながらメガネのお兄さんは小声で言った。
妙に恥ずかしいんですけど・・・。
なんとなく周りの人を確認する。
もしかしたらメガネのお兄さんはこちら側に聞こえているつもりはないのかもしれない。普通言わないもんね。
レジをシャシャッと打ちながら、足でリズムをとってるかのように、左右に肩を揺らしながら袋を取り出して商品を入れていく。動きスムース。
そこでぼくはタバコが切れたのを思い出して、慌てて付け足す。
「あっ、マイルドセブンワンのソフトをひとつください。」
ぼくのちょっとした動揺にメガネのお兄さんはそのリズムを崩すことなく、
「マイルドなワンのセブンを・・・3つですか?」
と言った。
「え、え?え?」
衝撃が走った。
マイルドなワン?のセブンを3っつ?
“マイルドな”って??
“な”って?何?
マイルドワン?何それ?
マイルドなワンをセブン?
で、なんで三つ?
しかもちょっと考えてから「3つですか?」って聞いたよね今?
ただ耳に入ってきた言葉をテンポ良く言い返して、途中でよくわからなくなったんじゃない?
あまりの唐突な言葉に、
失礼ながら、ぼくはそこで吹き出してしまった。
「ぷぷっ・・・ふふふっ・・・いや、一つでいいです。」
マイルドなワンってのは無いはずなのだが、ニュアンスは伝わっているはずだと訂正はしなかった。
メガネのお兄さんは不思議そうな顔をして、笑うぼくを見ていた。
いや、自分の間違いに気づいてよ!
これまた、ぼくが変人みたいじゃないか!!
流暢かつ迅速な接客を最前線に置いている、メガネのお兄さん。
「マイルドなワンのセブンを3っつ。」
錯乱を包み隠さずリズムよく打ち返した感じがとても面白かった。
先ほどから思い出しては笑ってしまう。
確かにタバコの銘柄って難しいんだよなー。