【朗読の夜の作り方】―蔵出しの夜⑥/Fumikura 原扶貴子
こんばんは!
さて今日は若狭勝也さんをご紹介しましょう。
若狭さんは「グラデーションの夜」-『群青の夜』『黒の夜』『桃色の夜』すべてのプログラムに出演していました。
メインの役から、アンサンブルの役まで、
今回の出演者の中でもその役の数は最多な中の一人だったかと思われます。
『群青の夜』の「ネオン」で、
歌舞伎町の客引き役として出演した後の楽屋では、
次の作品「ピエロ男」に備えて準備します。
客引きのはっぴのままで、ピエロ男の白塗り用のおしろいを溶いています。
「ピエロ男」では、
公園に立つ「なにもしない」という芸をするタイトルロール、ピエロ男を演じました。
もちろんまばたきさえも制限していたのです。
動作だけでなく、話す言葉もすべてあらかじめプログラムした言葉しか話さないというピエロ男。
この「ピエロ男」は若狭さんが探してきた作品でもありました。
おもしろいことに、野澤爽子が探してきた「いま何時?」のメイン役は野澤、私が探してきた「わか葉の恋」の語りは私自身と、Fumikuraメンバーたちは自身が探してきた本のメイン役になることが多かったのでした。
探してくる本は本人を現すのでしょうか。
さて、そのメイン役「ピエロ男」は若にぴったりのキャラクターだったのですが、
衣装の山崎と私でとても気に入っていた役が、
『黒の夜』上演の「迷路」に出演していた医師の役でした。
「迷路」の後半、主人公の昌司の母親が倒れてしまい、
往診に来た医者が昌司にこう言うのでした。
「しばらくは、このままですな。二、三日したら様子を知らせてください。お大事に」
-昌司のことをジロンと睨んで、帰って行ってしまった-
と続きます。
稽古中も、この怪しい医者のジロンが気になるとのことで、
控えめにするようダメ出しがでたりしていたのですが、
このジロンを弱くするとなんだか物足りなくなってきて、
最終的には当初のジロンに戻ったのでした。
衣装つきジロン。
通常、芝居をしていると顔芸って避けたくなるのですが、
たくさんのアンサンブル役を演じ分けた若狭さん、
ジロンもだんだんと自然に見えてくるのが不思議です。
若狭さん、メインの役にアンサンブル役にと、
大活躍の「グラデーションの夜」だったのでした。