2009年10月07日

「本と私について」―佐藤滋

zanngyakuki66.jpg

僕は本が好き…だと思います。
でも僕が今までの人生で読んできた本の数は、決して自慢できるほどではありま
せん…。だから、趣味が読書だなんて恥ずかしくて言えないですし、自分の好き
な作家を語って、と言われてもなかなかうまく答えられないのです。

だけど、夢中になっている読みかけの本がポケットの中にある時、僕はむずむず
としたこそばゆい気持ちを感じます。
幸せ…そう表してもよいかと思います。

**********

桐野夏生さんの『残虐記』を読みました。

横山君も全く同じ時期に読んでいたのは…単なる偶然か…それとも…シンクロ…
なんて大げさなことではなく(^_^;)バラと三人で話している時に、バラに薦めて
もらったのです。

もともと僕は好みが偏ってるし、興味のないものにはトコトン興味をしめさない
、ちょっと頑固なところがある(←もったいない)と自覚しています。例えばコ
ンピューターゲーム(言い方自体が古すぎ)は一切やらないし…。
本も同様で、サスペンスやホラー、ミステリー、推理小説とよばれる類はほとん
ど自分から手に取ったことが無かったのです。KAKUTAの前回公演『帰れな
い夜』の本選びの時、初めて本屋のホラーの棚の前に立ったほどです。

初めて、桐野夏生さんの作品を読みました。

正直に告白すると、僕は始まって16ページで一度本を閉じてしまいました。し
んどくて。…ついていけるのだろうか、とすら思いました。で、1日置いてもう
一度読み出したら、そのまま一気に最後まで読んでしまいました。
僕が感じたことは…
読んで良かった、ということです。
僕のように読書量も少ない人間ならなおさら、一生の中で出会える本の数はたか
だか知れていて、で、この本に出会う人生と出会わない人生があったとしたら、
出会うことができて良かった。

誰かの作品を、サスペンス、ホラー、ミステリー、などと分類するのは本当に便
宜上のことであるんだなって今改めて思っています。
なぜなら僕は『残虐記』を読んで感じているこの感覚を、なんとジャンル分けし
たら相応しいかもわからないからです。
初めこそ、僕はこの世界の生々しさに顔を背けたくなり、思わず本を閉じました
。でももう一度本を開いた僕は、桐野さんの作品の中に流れている何かに、確実
に引きつけられていたわけです。

これから僕はもうすこし桐野さんの作品を読んでみようと、今そう思っています