2009年09月11日

「残虐記」 に魅せられて―横山真二

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私が読んだ本。
「残虐記」 著:桐野夏生

なんだか凄まじいエネルギーの詰まった本です。
文庫サイズで250ページちょっとの小説です。

普段本をそんなに読まない自分ですが、1日で全部読み終えました。
というか止まりませんでした。
何か取り憑かれたように一日中読んでました。
普段、こういった小説を読み終えるのに大体5日以上はかかります。
それは単純に、読む時間がないとかそういうことではなく活字を長時間読むということに自分が耐えられなくなったり、集中力だったり、体を動かしたくなったりするのだろう。

「残虐記」という本は、ある作家が”自分は少女誘拐監禁事件の被害者だった”という驚くべき手記を残して失踪したところから物語が始まります。

当時少女だった頃に、男に監禁された1年と1ヶ月と2日の過去を赤裸々と綴っています。

本を読んでいくにつれ気持ちはどんよりしたものになるし、気持ち悪くなったりもするし、嫌な気分になったりもする。でもこの話の展開が気になって仕方がない。
面白いとはまた違う感覚。興味深い・・・。興味深いなどと言っていいものなのか困惑する。


この手記は、有名な「新潟少女監禁事件」をモチーフに書かれたといわれています。
当時、自分が最も衝撃を受けた事件だ。
9年2ヶ月の年月を監禁されていた事件だ。
その時の衝撃も一緒に蘇った。

人は少なからず、別人格を持ってると思う。
生きていく中で数々の経験で人格が出来ていく。その経験が大きく残虐的なことであればそれがそのまま一生トラウマとなることもあるだろう。

この「残虐記」に描かれている、少女が監禁され、男と過ごした一年1ヶ月。
監禁から保護され、世に出た後の世間の煩わしい人間関係。
その煩わしい世間よりも、どこかでまた男との生活に戻りたい自分がいるという正直な気持ち。

大人たちを信じ、裏切られてきたなかで出来たきた人格。
それは、到底共感できないと思われるようなことだが、共感できてしまいました。
まだ、この「残虐記」を読んで、すっきりしない部分もある。

「残虐記」に魅せられて、桐野夏生氏に魅せられて、読み終わった後すぐに別の著書「柔らかな頬」を購入して読み始めたが、なかなか思うように読み進まない。
そして、今もう一度この「残虐記」を頭からゆっくり読み返してます。