2009年09月10日

大作「海辺のカフカ」―大枝佳織

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読んだ。
「ノルウェイの森」以来の村上春樹。
「海辺のカフカ」。
タイトルの美しさに惹かれ、ずっと読みたいと思っていた。
上巻を読み終えた所で、何て面白いのかしら!とあまりの面白さにガクガクと取り乱した。
公演稽古中であった為、構成台本を読まなくてはいけないのだが海カフが止まらない。

日頃、丸の内線での爆睡を楽しみとしているが、海カフを手に寝ることなんか
出来ず電車を降りてもホームでしばらく読んでしまった。
壮大な世界。
紐解かれ、また絡んでいく3つの話。
凄いわ、春樹。
いや、春樹さん
計算ではなく必然のごとく広がり繋がっていく話に感嘆の声を洩らしてしまった。

これ程に興奮した海カフだが、下巻に入ると失速する。
面白くなくなったということではないのだが、話の流れで不思議な理解出来な
い点があり止まってしまう。面白いけど、で、この人は結局誰なのかしら?
そ、そうか、でも何故?
など、何度か戻ったりし謎解きの様な読み方になり純粋に読めなくなる。
でも、ここの下りが好きだとか、泣いてしまうところなどは所々にあり楽しめた。

村上春樹フリークである佐藤さんに伺ったところ、
「それで良いんだよ!」と嬉しそうに輝いた目で励まされた。
村上春樹の楽しみかたとしてその文章の美しさ、描かれる世界に引き込まれる
ことが大切だとのこと。
確かに、後半分からないことが気になりながらもその世界に引き込まれドキドキしたり胸が一杯になった。佐藤先生の熱い言葉に納得。
さすが現代の純文学。
こういう楽しみかたもあるのね。

でも、村上文学の楽しみ方は分かったけどね、どうしても気になるのよ。
あの人は誰か、結局あの関係は何だったのか、あの話は何だったのか、佐藤さんはどうとらえたのか知りたくて思い切って聞いてみる。
佐藤先生、迷いのないキラキラとした目で答えてくれた。
「それは俺も分かんねえ!」

あ、そうなのね。
分からないのに納得出来る佐藤さんの大きさ、純文学とは何だ、改めて考えさせられる。