作・絵/佐野洋子『100万回生きたねこ』-ヨウラマキ
絵本が好きです。
ながいのをいじいじと読むのもすきですが、せっかちな私は先に結末を読んでしまったり、めんどくさくなって途中でやめてしまったりすることも少なくないです。
だから、すぐ読み終わる絵本は好きです。好きな理由はそれだけではないけれど、短い言葉と絵で綴られた作品たちは、真っ直ぐ心にくるな、と思います。
この本は、佐野洋子さんが描いた絵本です。
私は佐野洋子さんのエッセイも好きです。ざくざくざくと書かれる文章が好きです。嘘がつけない人間の嘘が混じったエッセイ。
エッセイを書いていることを知ったのはつい最近のことでした。
この本は、100万回生きたねこのはなしです。
実は、小さい頃この本が嫌いでした。ふてぶてしくて意地悪なねこが、どうにも好きになれなかったからです。こっちを睨みつける緑色の目。シマシマのでっぷりしたねこ。いかにも性格が悪そう。
だから、友人が22歳の誕生日プレゼントにこの本をくれた時、友人には悪いけど、これ、好きじゃないんだよね、と、魔女の宅急便に出てくる、ニシンのパイのお孫さんのような気持ちになりました。
読む気も起きなかったので、本棚にこっそり、片付けてしまいました。ほんとにひどいことしたな。
だって何より、十数年ぶりに再会したねこが、緑色の目でこっちを睨んでくるように見えたから。
しかし、去年の10月、ひっそり本棚中にしまっていたこの本を、たまたま、ほんとにたまたま、なんとなしに開いたのです。
本が本棚に放置されているのがいたたまれなくなったことってありませんか?ほんの気まぐれで見てやりました。
すると、ページを進めるごとに、今まで感じたことのない感覚がやってきました。何処か懐かしいけれど新しい感覚。緑色の目をしたねこはただの意地悪なねこでなく、寂しさと孤独をかかえた、悲しいねこでした。
ねこはただただ100万回死んでは生き返るを繰り返していました。周りの人たちが理解できず、自分自身もまわりのひとから理解されない。でもそれでいいんだってつっぱねて、生きながら死んでるねこ。
小さい頃に感じた意地悪さは、きっと彼が強がっているだけだったのだなと、感じました。
彼は寂しくて寂しくて仕方ないねこだったんです。
白い美しいねこと出会って、恋に落ちる瞬間の文章がとてもロマンチックだし、おしまいもとても素敵。
愛を知ったねこは生き返らなくなるんです。
そしてねこの目の色が、白い美しい猫と出会ってから、緑色の鋭い目から白い美しいねことおそろいの青色に変わるんです。
なぜだかおいおいと、泣いてしまいました。ほんを読んでおいいなくなんて、あまりない経験でした。
そしてなにより、嫌い嫌いと思ってた本が、こんなにかけがえのない本になるなんて!
この作品に再び出会うきっかけをくれた友達に、ありがとうって、心からいいたくなったのでした。