2013年10月07日

角田光代著『それもまたひとつの光』―大枝佳織

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大分前に読んだ本だが、読後ガツンときて目の前が少し開けた気がした。

角田光代さんの本はほぼ読んでおり大体が面白いが、好きな本が登山ものだったり人間ものだったりするので恋愛を扱う角田さんの作品は面白いどまりだった。
その中で、この本はちょうどその時の自分に沁み入った。
恐らく数年前に読んでもここまで思うことはなく、今のこの時期に読んだからこそ感じることができたことが多かったのだろう。
本はそういうところが面白いワンと改めて思う。

話は主人公を中心に三人の女の恋愛、幸せになれないと分かりながらも大好きな人と一緒にいることを選ぶ先輩や、傷つけられながらも大好きな人を追う友人、そんな2人を見ながら主人公が結婚を決める。
誰もが大好きな人と結婚したいと思うだろうが、情熱的な恋はそれに伴う悲しみも大きく辛いことも多い。
その分喜びも大きいが、主人公は自分らしく生きるために情熱的ではないが穏やかな温かさを感じることの出来る幼なじみと結婚を決める。
私もどちらかというと情熱派で身が滅んでも、と行きがちだが日々の暮らしの中で小さな楽しみを見つけながら穏やかに生きていくのも素敵なことだなあと思った。
穏やかな気持ちでいると、大きな喜びや悲しみの中だと気づかない小さなことに目を向けることができる。
主人公は小さな日常のことを沢山感じながら日々を送りたいと言った。

邪道だと無視していたわらび餅の抹茶味が意外にも美味しかったとか、楽しみにしていた花の蕾が咲いたらとても変な色だったとか、見かけた虫が人面だったとか、そんなことは情熱的な恋の中では気づかなかったのだろうなあと思った。

どちらにせよ自分が選べる状況にあることは幸せなことだ。
結婚するのなら大好きな人だと自分が無意識で思っていたことに気付き、穏やかに好きな人でも良いのかと新しい選択肢が増えた。

とはいっても、やはり身滅ぼし系くらい好きな相手と結婚したいなあなんて思ってしまい、とりあえず三国志風に流れに身を任せ天意を待つことにする。

どちらにしても、友人でも先輩でも主人公でも誰が正しいということはなく、その人が覚悟を持って決めたことならば何が起きても受け入れることが出来るだろう。
また、それぞれに素晴らしい時間があるのだから自分で決めたことに腹を括って受け止めることが大事なのだろうとしみじみ考えた。

とりあえずどちらもまだ選択に迫られていない私は今流行りのカステラでも食べながらワインを飲みじっとしていよう。

美味しすぎてしばらく息が出来なかったレモンかすてら、夏季限定で来年までどうやっても売ってくれないらしい。