2011年03月26日

絵本「ぼくはおにいちゃん」「ぼくにげちゃうよ」-大枝佳織

110218_1429~02.jpg
「ぼくはおにいちゃん」「ぼくにげちゃうよ」
絵本です。
本でなくて良いかしらとも思ったけれど、残念ながらここ最近で読んだ本があまり面白くなかった。
面白くなかったこともあるのだけど、この絵本は紹介したいと前々から思っていた。

短大で幼児教育を学んでから、本屋で時々気に入った絵本を買うようになり、気付いたら本棚に大好きな絵本が集まっていた。
その中で、「ぼくはおにいちゃん」は買った本でなく子供のころから大切に持っている本。
穴があくほど読み、全てのページに愛着がある。

いもとうようこさんの絵が温かく、優しく、沁み入ってくる。
5つ子の赤ちゃんのおにいちゃんになったノンタが、今までのようにお母さんにかまってもらえないとやきもちを妬き、赤ちゃんを捨ててしまおうと色々な捨て方を考える。
自分がかまってもらえないから赤ちゃんを捨ててしまおうというノンタには、何故だか親しみを覚え感情移入してしまう。
それぞれの捨て方を実行しようとする中で、赤ちゃんに対して新しい感情を抱き、お兄ちゃんとして自分が考えてしまっていることに気づく成長のお話。
赤ちゃんの捨て方も子供らしく憎めなくて可愛い。捨ててしまおうと悪い顔も、捨てられなかった情けない顔も、捨てて良いのか葛藤する顔も、何とも言えないタッチで描かれており、読んでいてどんどんノンタに心を奪われていく。
お母さんに言われるから、おにいちゃんになったのだからということではなく、あかちゃんに対して純粋に思ってしまう気持ちから、気付いたらおにいちゃんになっていたというところは、自然で無理がなくて好きだ。
最後に夕陽の中5つ子の赤ちゃんたちと手をつなぎ嬉しそうにお母さんの元に帰る姿は印象的で、何回読んでも涙が出てくる。

私に弟が出来た時に母が買ってくれていた本で、弟好きになったのはこの本が影響しているのかもと思う。気持ちが満たされる、優しい絵本。

「ぼくにげちゃうよ」
は、うさぎの親子の何とも何とも可愛いやりとりのお話。
いろいろなものになってお母さんから逃げてしまうよ、というプチ反抗期の息子うさぎに対しての、お母さんうさぎの返しが面白い。
お母さんうさぎも、息子うさぎのなるものに合わせて更に上をいくものになるというのだが、それが無理やりで絵が面白く笑ってしまう。笑ってしまう中に母うさぎの息子うさぎに対する深い愛情が伝わってきて幸せな気持ちになる。

2作とも、笑ってしまう、何だか憎めない子供らしい悪知恵が描かれているので単純に良い話ではなく、親しみやすく心の奥に残ってくる。

春にぴったりのこの絵本、良かったら是非。