2013年10月04日

吉田修一著『さよなら渓谷』―異儀田夏葉

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最近映画化され、真木よう子さん主演で話題にもなりましたこの作品。

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わたしは未見ですが、吉田修一さんの作品てよく映画化されていますよね。悪人、横道世之介、などなど。

吉田修一さんは、自分が恋愛作家だとおっしゃってるようで、ふむふむ、なるほどなぁ…と唸りました。

この『さよなら渓谷』も、あるちいさな町で起こったある事件から、その事件からは無縁で、ただの隣人であるはずの若夫婦の抱える秘密、謎が浮かび上がり、ともすればサスペンスっぽくもあるストーリーなのだけど、最後にはその夫婦ふたりの屈折した愛情、なんだけど、純愛、みたいなものがじんわりしみだしてきます。

“行間を読め!!”などと、国語の授業や、演劇の稽古のダメだしなどでも言われますけども、吉田修一さんは“間”というか“空白”の表現が巧みというか。はげしいラブシーンがあるとか、あまーい会話のやりとりがあるわけではまったくなく、第三者が、今回は記者ですけど、事件の真相を追う中でふたりの切っても切れない関係性や激しい感情が垣間見えてきます。

書きたいのは事件のことではなくて、この二人の寂しく激しい恋愛だったのだなぁ…と、お子ちゃまなわたしは、そんな恋愛してみたいわ、などと思いました。

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しかし、ふたりの秘密は重たいよ…。