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吐露始め 2009/07/28 火曜日

真夜中の子供

つい今さっきの話だ。
真夜中2時過ぎ。実家のPCに向かい、作業をしていたら。
突然、ベランダの向こうで子供の泣き声が聞こえた。
見ると、向かいのアパートから小さな女の子が出てきて泣いている。
最初、悪いことでもしてお仕置きされたのかと思ったが、アパートの部屋は暗く、誰も出てくる気配はない。
「ママどこー」

しばらく様子を見ていたモノの、ほんの目と鼻の先で泣いている子供を放っておく訳にもいかず、ベランダから声をかけた。
「どうした」
相変わらず子供相手にえらくぶっきらぼうになってしまう。
「ママがいないのー」
子供はそういって泣いている。
「一人なの?」
頷く子供。どうやら、夜中目が覚めたら誰もおらず、不安になって出てきた様だ。
知らないウチの子なだけに、帰ってくるから中にいろとも言えず、かといって泣いた子を放置して作業する気にもなれず、迷った挙げ句、実家にあったビスケットを持ってその子のいるアパートへ降りていった。
リビングに降りるなり、まだ起きていたうちの母が、なぜかこのタイミングで「ネエ、月下美人が咲いたのよ」と花を見せようとする。
そんな母をいなして、家を出た。

外は雨。真夜中。アパートの前で、暗闇にボウと立つ白いパジャマの女の子。
なかなかに恐ろしいシチュエーションだ。
また、ビスケットを持ったノーブラの怪しい女が話しかけているのを親御さんに見つかったら誤解されまいかと葛藤する気持ちもある。
しかし、真夜中一人で目が覚め、誰もいない不安はよくわかる。

「ママいないの?」
聞くと、子供はこくりと頷いた。
水商売か…?
「じゃあ、お仕事いってるんじゃないかな?」
「お仕事はパパなの」
…そうか。
「うーん、じゃあ、お買い物でも行ってるのかもねえ」
…無理があるか。あるな。
と、女の子が言う。
「おばあちゃんち行ってるのかも」
それ!それだよ!!
水商売とか、飲みに行ってるとか、はたまたパパ以外の男性と…?など、怪しい理由しか思いつかなかったので、健全な理由が女の子から出てきて、ひとまずその意見に強く賛成した。
おばあちゃんち行ってるんだよ、だからすぐ戻ってくるよ。
このビスケット食べる?美味しいから元気が出るよ。
女の子はこくりと頷き、私はビスケットを2枚あげた。
箱ごとあげても良かったが、2枚で良いらしい。育ちが良い子供だ。

女の子はゆっくりビスケットを食べ始めた。
よく見ると、とてもカワイイ顔立ちをしている。
見つけたのがお姉さんでヨカッタネ。
こういうとき私は決して自分をおばちゃんと呼ばない。
「いくつ?」
女の子は、ビスケットの粉がもっさりついた小さな指で3と出す。
ず、随分ちっちゃな子供じゃないか!
子供がいない私は、大きさで年齢を判断できない。
「あ、名前は?」
今さら名前を聞くのも、私が子供に慣れていない証拠だ。

喉に詰まってえらいこっちゃになったら怖いので、牛乳でも持ってきてやれば良かったと思ったが、引き返すタイミングがない。
さすがに家に入るのはまずいので、ゆっくり食べる間、付き合うことにした。

女の子は食べているウチ、リラックスしてきたらしく、
「あのねえ、◎◎ちゃんが好きなの。幼稚園のお友達」
前触れもなく幼稚園の話が始まった。
◎◎ちゃんと××ちゃんが昨日幼稚園を休んだこと、今は夏休みであることなどを聞く。
「笹の葉って知ってる?昨日幼稚園に飾ってあったよ」
今さら?など、細かいことは気にしない。
**ちゃんは、お願い事書いた?
「うん」
お願い、なんて書いたの?
「*****(自分の名前)です!って」
・・・・・子供って面白い。
「笹の葉に飾ってあったよ、ひこぼし様とお星様としかく」

「しかく」
しかく?…オリヒメ様ではなく?
「しかく」
…しかくって、これのこと?
ビスケットの長方形の箱を見せると、違う、というそぶりで、箱の中でビスケットを小分けしている、更に小さな正方形の箱を取り出し、「これが四角だよ」と、おしえてくれた。
なるほど。
じゃあね、こっちの箱(ビスケット)は、長四角っていうんだよ。
なぜか深夜に図形を教えている。

「この音ナアに?」
雨だよ。
「雨チャンか!アンパンマンの」
そう(…なのか?)、その雨チャン。
「虫ちゃんがいるー」
(蛾だ…)
その虫ちゃんは夜に元気な虫ちゃんだからさ、虫ちゃんからしたら、「なんでお昼元気な**ちゃんが夜にいるの?」ってビックリしてるよ。だからもう寝ようか。
怖くなったら、お姉ちゃん(かたくなにそう呼ぶ)はあそこにいるから、怖いよーっていったらまたきてあげるよ。

ビスケットで満たされ元気になった女の子は、ニコニコと頷いた。
アパートの部屋を開けると、中は真っ暗だ。
私は子供の頃、煌々と電気がついていなきゃ眠れなかったので、一瞬、ドキリとする。
しかし女の子は特に気にするでもなく入っていった。
内鍵をかけるよう伝え、音を確認し、アパートの外からおやすみ、と声をかけた。

「おやすみ!!」

真っ暗なアパートの部屋の中から、女の子の元気な声が聞こえて、なぜかキュンとした。
私は部屋に戻り、残ったビスケットをちょっとかじって、母と一緒に月下美人を見て、今はまたPCの前にいる。
ベランダからあの子のアパートが見える。
あの子は眠れたろうか。アパートから出てくる様子はない。泣き声も聞こえない。

お母さんは、まだ帰ってこない。

吐露終わり
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