2010年12月11日

百田尚樹著「永遠の0(ゼロ)」-山崎留里子(衣装)

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「永遠の0」のゼロは零戦のゼロ。
太平洋戦争中に日本が使用した戦闘機の事です。

基本的に、私は戦争を題材にしたものが苦手です。
小説、映画、ドキュメンタリー等、戦争ものは割と意識的に避けるようにしてきました。
戦争について知る事は大事な事だとわかっていながら、悲惨さや残酷さばかりが生々しく自分の中に長い間残ってしまって、読んだり見たりした後に後悔する事が多かったからです。

でも、今回この本を読んでみようと思ったのは、知人に薦められたからと、読んだという何人かの全員が絶賛していたからです。
「この作品は読んだ方がいい、読んでほしい」と言われて流されるように読み始めました。

読み終わってみて、本当に読んで良かったと思います。
戦争ものだからといって、いつものように回避しなくて良かったと。


終戦から60年目の夏。特攻隊で戦死した零戦パイロットだった祖父について調べるため、姉弟が祖父の元戦友たちに話を聞きに訪ねて回る事で物語は動いていきます。
それぞれの戦争体験や証言からだんだんと浮かび上がってくる祖父の姿。
凄腕を持ちながら、同時に異常なまでに死を恐れ、「生きて帰る」という妻との約束にこだわり続けた男は、なぜ特攻に志願したのか・・・


読み進むにつれ、どんどん引き込まれました。
元戦友たちの話に、実在していた日本軍人の実名がたくさん出てきたり、零戦の空中戦についてのリアルな話など、戦争や零戦に疎かった私でも、興味深かったです。
零戦が当時の日本の工業力で作られると思わなかった世界最高水準の戦闘機だった事や、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、ガダルカナルなど聞いた事はあっても太平洋戦争の経過や実態について知らなかった事が多く、驚きの連続でした。

そして、当時のパイロットたちや特攻隊員たち、戦争に巻き込まれた日本人の苦しみやどのように戦い、生きたかが描かれていて、痛いほどに伝わってきます。
「十死零生」という言葉が何度も出てきて、万にひとつも助からない、確実に死ぬとわかっていながら特攻に行く人たちの気持ちを思うと、苦しくなりました。

ラストに近づくにつれ明らかになっていく謎、そして作品全体を通じて感じた大きな感動。


私のような、戦争の時代を知らない世代の人たちこそ読むべき、読んでほしい本だと思います。
平和のありがたみを忘れがちな今の時代だからこそ、戦争というものに向き合わなければいけないのかもしれないと実感しました。


改めて、この本を読んで本当に良かったです。
心から面白かった、と思える本に出会えた時は、読書する事の幸せを感じます。