2013年11月04日

沼田まほかる著『アミダサマ』ー大枝佳織

本を読むのは専ら半身浴をしながらでお風呂にいることがほとんどだ。
湯に浸かりながらバスソルトの花の香りの中で本の世界に浸るのは贅沢な時間で長々と過ごしてしまう。
地ビールなど持ち込んだら最後、楽しくてなかなか出て来れない。

そんな基本ラグジュアリーな入浴時間を早々に中断せざるを得なかった異例の本。

「アミダサマ」
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面白いのだ、けれども…怖い!
よくあるダイレクトな怖さの怪談とは違い、登場人物の心情の変化や人物に迫る描写が細かくじわじわと深い恐怖に包まれる。
浴室という所がまた怖い!
水滴や空調の音、ドアの向こうの部屋で時々する物音に過剰に反応してしまう。
続きが気になるし1日のうちの特別なこの時間をどうにか継続したい為浴室のドアを開けて怖さ軽減を試みるも、一度怖いと思った心は恐怖に支配されていく。
もはや花は香りを失くし、ビールも味がしない。
頭や顔を洗う時なんて目を閉じるのがとんでもなく恐ろしく、お花とビール色に染められたラグジュアリーな時間は暗黒色の恐怖時間に変わる。
読んで数日は一秒でも長くと怖さを我慢して読んでいた。
しかし、その我慢の時間が怖さを倍増させ体をしっかり洗えなかったり髪にシャンプーが残っていたりという事態を引き起こすことに気付き、恐ろしの予感がするとすぐに中断することにした。
恐怖分散戦法を編み出し何とか読んだが完読までかなり日数がかかった。
しかし、続けたい気持ちがあっても我慢して読んだ先にどのような状態が待っているかを見通してやめておく、そんな大人な選択が出来る様になった自分を褒めたい。

ネタバレになるが、話に猫が出てくるのだがこれがまた恐ろしかった。
いろいろな本に時々猫は出てきてその度毛並みや顔つきを思い浮かべ愛しく思うのだが、今回話に出てくる猫は毛並みや顔つきなどどうでもいいおっそろしい恐怖猫だった。
おかげで実家の猫を見る目が変わった。
にゃにゃ~ん、と大好きなカブキが愛くるしく近づいてきても目を逸らしてしまう。
大人の選択が出来る様になった代わりに猫への無償の愛を失くしてしまった私をカブキが寂しそうに見ていた。
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