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吐露始め 2009/09/16 水曜日

北九州「甘い丘」演出日記・2

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8月某日。
花れんちゃんと初めての、二人だけの音打ち。
音楽がその場で聴けた方が良いので、花れんちゃんのテラスハウスにお邪魔する。
同じように表現に携わる仕事、いわば自由業をしているにもかかわらず、花れんちゃんのテラスハウスは美しく、庭付きで、ほう・・・となる。
あたしんちはスナックの二階であり、ヒビが入っており、震度2の地震も5ぐらいに感じるボロアパート。
いいことと言えば、スナックのカラオケがうるさいので、深夜に掃除機をかけたり歌ったり大喧嘩したりしても大丈夫というくらいか。
また拭き掃除も行き届いており、私の家に花れんちゃんは入れられない、と静かに思う。
花れんちゃんが「バラちゃん、掃除嫌いそうだよねえ、アハハ!」とあっさり言うのだが、私は普段から不潔なオーラを発しているのだろうかと不安になった。

打ち合わせはとんとん進んでいく。
それにしても、花れんちゃんの曲がいい。
打ち合わせ前にデモ用の劇中曲を作ってくれていたのだが、どれを聴いても良く、また抱いているイメージもぴったり。「相思双愛」の時よりも、そのフィット感を明確に感じる。
それだけ花れんちゃんが台本を読み込んでくれたということがまた嬉しい。
音楽に関しては既に手応えを感じる。
バンダラコンチャでの出会いに感謝。

8月某日。
8月も後半にさしかかり、いよいよ9Rが近づいてきた。
この頃になると、衣装プランの相談や、台本の修正、舞台の装飾、小道具など、細かい打ち合わせが増えてくる。
その打ち合わせは全て電話かメール。東京と北九州の距離なので当たり前だが、普段打ち合わせなどのスケジュール管理は演助に任せきりであったため、どの程度の頻度で連絡を取るべきなのか、迷いつつメールを送る。
結局、毎日の様に企画担当の野林さん(最初に能祖さんとあったとき一緒に来てくれたカワイイ女性の一人だ)と、文通している形になる。
最初こそ二人とも、自分の近況報告なども含めたメールにしていたのだが、そのうち確認したい事項が互いに多くなり、業務連絡をバンバンと送り込む。
そうしたビジネスライクなやりとりはしかし、不思議と「ちゃんと進んでいるぞ」と思わせられ安心にも繋がる。
また、電話で照明さんとも打ち合わせ。
希望を述べてみると、非常に的確に理解して話を聞いてくださり、更に安心した。
顔が見えないやりとりのもどかしさはあまりなく、逆に、この囁くように話す方はどんなお方なのかしらんと、お会いするのが楽しみになった。

8月某日。
家にいると夏の陽気に集中力が保てず、近所の漫画喫茶へこもり、台本のカットや立ち位置などを全て一から考え、ノートに書き込む。
こういう作業は「朗読の夜シリーズ」で毎回行っていることなのでさほど苦ではないが、小説ではなく、戯曲なので、どこまでト書きを読むべきかのバランスが難しい。
漫画喫茶の中で、お借りしていた過去の9R作品の舞台映像を観た。
鈴木聡さんの「裸足でスキップ」。これはもともと大好きな作品でビデオで何遍も観たので、よく憶えているから、朗読だとこうなるのか、と非常に勉強になった。
一週間の稽古とは思えない完成度に驚愕。

だがそれにしても、私の演出する朗読とは何なのだろう。私は何がやりたいのか。
9Rの朗読スタイルは自由で、台本を持ってさえいれば、実際に台本を読まず、丸めて持っているだけでもいいし、まったく動かず朗読するのもあり。
その自由度の高さにまた悩み始めてしまう。
読まなくて良いなら、普通に芝居すればいいと言うことにはならないか。演劇に負けないか。
いっそ「朗読の夜」シリーズのアクティブリーディングスタイルにしてしまえばいいのか。
でも読みたい。読む、という行為を残したい。
グルグル考えは巡るが、悩んでもしょうがない、と頭を振り、とにかく自分のやりたいことをガシガシとノートに書き込んだ。

漫画喫茶に来たからには、もちろん漫画も読んでしまう。

9月某日。
時間をかけて台本をエイヤとカットしてきたが、もうこれ以上は、というところまで来た気がする。
小ネタなど、削ろうと思えばまだ削れなくもないのだが、私が俳優ならばここを削られたらガッカリするだろう…などと思うと、どうにもバサバサ切ることが出来ない。
しかし、ト書きは大幅に削った。
能祖さんが8月のテクニカルミーティングのあと、「小説を書くつもりでト書きを考えてみな」と言っていたので、ト書きも一から朗読用に書き直した。
骨を折る作業だったが、声に読んで面白いト書き、と言うものを少しだけ学んだ気がする。

そんななか、KAKUTAの顔合わせ。
俳優として作家として演出家として、とても楽しみにしていた顔合わせだが、今回は9Rの参考になるというちゃっかりした考えも胸に潜めて、読み合わせ。
果たして、久々に皆が集まっての読み合わせは、とても面白くホッとする。
2時間20分あった北九州の読み合わせの時、そのあまりの長さに、この台本は…面白いのか?と不安になったのだが、ト書き抜きで読んだ初演版の台本は、カットなしで1時間45分。
そうか、テンポを上げればいいかと、少しホッとする。

いよいよ北九州への出発が近づいてきた。
緊張とプレッシャーが、静かに溜まっていく。
嗚呼、行きたくネエと呟いてしまう自分がいる。
じっさい、新しい座組に参加するときは、割合いつもそう思う。
しかし、その度合いが大きければ大きいほど、反動も大きかった。
ヴォードヴィルショーで演出したときもそうだ。
あれほど行きたくないと思っていたのに、芝居が終わる頃には皆が大好きになり、離れがたかった。
今回もそうなったらいいのに、と怯えながら祈る。

吐露終わり
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