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吐露始め 2009/09/19 土曜日

北九州「甘い丘」演出日記・7

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9月12日 
北九州芸術劇場リーディングセッション「甘い丘」、初日。

いよいよ、と自らを煽る余裕もないほどのあっという間で、初日が来てしまった。
昼にゲネプロ。夜に本番。稽古初日は5日前。なんだか早すぎて私が追いつけないが、キャストのみんなはもはや初日を迎える役者の顔になっている。
昨日の反省をふまえ、再び4場は重厚でしっとりとした良いシーンになっていた。
ラストシーンは、全てを吹き飛ばす女たちの明るい笑い声が必要だ。
そこには気構えだけでなく、物理的な声量や、迫力が必要になる。
女たちの「引き上げる力」。
この作品の、一番大事な部分だ。
もう一歩、あと一歩、力が欲しい。

本番。
楽屋のモニターに、客席が映し出される。
お客さんが入場する様子が写っているのをイッチーはジッと観ている。
イッチーは自分の芝居の時も、ここでモニターをチェックし、お客さんがスムーズに入れているか、何か問題は起こっていないかなどを、観ているらしい。
偉いなあ、と思うのだが、私はなかなかどうしてモニターを見ることが出来ない。
何だったらチャンネル変えてクレよ、とまで思ってしまう。
だって、緊張するじゃない!!
実際、モニタどころか、客席でお客さんと一緒に芝居を観るのも苦手だ。緊張で倒れそうになる。
それは端的に言って、慣れてないからだ。
なぜなら、私は自分も出演するので、本来はその時間、袖にいて皆と一緒に出番を控えているからである。
袖にいれば、もし舞台上で何かあっても、一緒に助け合える。
だけど客席に出てしまえば、舞台で何があっても、ひたすら祈るしかない。
その緊張はもしかすると、袖にいるときよりも大きいかも知れない。いや、また違う種類の緊張なのかも知れない。
というわけで、開演ギリギリになって客席へ。
お客さんはほぼ満席。斜め前に東京から来た私のマネージャーさんを見つける。

19時05分。開演。
昨日の初通し同様、皆緊張している。客席の私も緊張し、手に汗がジットリと溢れる。
小さなミスも細々とある。しかしもう、ここまでくると、間違えたことに後悔するより、取り戻すことに集中するしかない。そして、本番を乗り越えるのは役者個人の勇気と頑張りでしかない。
大丈夫、大丈夫、慌てるな、そこだいけ!…などと、監督のような気分になり、気がつくと自分もキャストの台詞を口の中で動かしている。
序盤は鳶音やみねがリードしていく。みねは最初のインパクトが大事なので、格好良く決まるとキャラがクリアに見えてくる。彼女の、美保純のようなやや酒枯れしたようなハスキーボイスが大好きなのだが、それが遠慮なく立つと、このシーンは抜群に面白くなる。
然治幹治が登場と同時に笑いを誘っている。この組み合わせは心底奇跡である。体型が似ているのもあるが、味わいがそれぞれに違い、キャラ分けがハッキリされているのも良いところだ。
冒頭でどれだけぶれても、中盤、一番の盛り上がりである3場になると、皆繰り返し稽古をしてきた自信もあるのか、まとまってくる。やはりこれは茜やともえの力もあるのだろう。そして虎杖の迫力ある叫びが、舞台を締める。

終盤、気がつくと激しく鼻をすする声が聞こえる。ふと目をやると、マネージャーがボロ泣きしていた。
東京からここまで来てくれた彼女の愛情と、そのすすり泣きを愛しく思う。
ラストシーン。求めていた強さが出たと感じた。女たちの逞しさとかわいらしさが溢れていて、嬉しかった。

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(甘い丘男性キャスト陣。なりの両サイドにいるのが噂の然治と幹治)

終演後アフタートーク。
能祖さんと花れんちゃんとキャストたち。
鳶音役の寺田君が、私の演出は早口で、落語のようだという。やっぱり早口なのか、そうなのか。
良い役者だなあ、という以外、所属する劇団などはそこまで意識していなかったけれど、考えてみれば彼は飛ぶ劇場の俳優さんなのであった。飛ぶ劇場の泊さんは、私が利賀の演劇フェスに行ったときに一度、お会いしたことがある。私たちの芝居を観て、批評してくれたのだ。
どっかの老舗劇団のおじさんにぼろくそ言われた私たちに対し、泊さんは温かく、かつ的確なコメントをくれたので、「なんていい人だ」と、「こんないい人の作る芝居は面白いに違いない」と、真に利己的ではあるがそのように記憶し、お顔も良く覚えている。
寺田君はその飛ぶ劇場の看板俳優なのだそう。
これだけ良い俳優がいる劇団、もっと早く観に行けば良かったと思う。

この日の公演にはシアタートラムの矢作さんも観に来てくれた。はるばる、東京から。
マネージャーに、能祖さんと矢作さん、今日は客席に二人もバラちゃんのお父さんがいたんだねえ、といわれて、本当にそうだと思った。
矢作さんにトラムで鍛えられ、育てられ、「甘い丘」が出来た。今やトラムはKAKUTAのホームグラウンドとさせて頂いてる。
このリーディングで学んだことを、形にし、また矢作さんに観てもらいたい。と強く思った。

初日を終え、皆晴れ晴れとした、明るいムードではあるが、成清にはきついダメ出しをしてしまう。
ナリ自身、よくわかっていることなのだと思うが、どうしても話しておきたかった。
こればかりは、明らかに劇団員向けの、ダメ出しだ。長く一緒にやってきたからこそ、そしてこれからもやっていくからこそ、厳しくなる。
いつもはホテルに戻ると部屋に遊びに来てひとしきりお喋りするのだが、この日ばかりは早々に部屋に戻り、ナリは遅くまで台本を読んでいたようである。

吐露終わり
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