ではではさっそく、あらすじ解説を交えてご紹介していきましょう、「さとがえり」の巻。
(写真はクリックすると大きくなります)
舞台は先述の通り、長野県にある合宿所「大門」。
実はここ、かつて実際に松原湖にあった合宿所そのままです。名前もそのまんま。
なにをかくそう(隠しちゃいないが)、私も子供の頃、父に連れられて、この合宿所によく泊まりに来ていたんです。処女作品だけに、大好きだった場所を舞台にチョイスしたんですね。
合宿所の見た目もかなり、このまんまです。つまり、普通の民家のような宿。
子供の頃、夏休みで何が楽しいって、この大門で過ごす数日間。
ここに来て、テニスをする父と父の友達。近くにテニスコートがあったんですね。
んで、私はその父の友人の子供たちと遊ぶわけです。
テニスボールを盗んだり、探検をしたり。夜はボートに乗って大人に混じっておつまみを食べ、ファンタを飲みます。
そんなエピソードも本編の中にかなり反映されています。
ほれ、こんな風に。
うちの父もまさにこんなテニスウェアでキメておりました。
では、そろそろあらすじを簡単に。
これはある夏の盆休み。
お父さんの三回忌のため、父方の田舎にやって来た、ある家族。
母、長女、次女、末っ子の長男。
見たところ全員同世代に見えます。が、実はこの中にいる若い娘はお母さん。
お父さんがこの世を去って以来、なぜかお母さんはどんどこ若返りしてしまったという、奇妙なお話でございます。
宿を切り盛りするのはこの家族・田端家の親戚で、長女たちの従姉妹。
叔母にあたる母・みずえの急激な変化に戸惑いを隠せないのは当たり前。
もちろん、家族たち以外に普通のお客さんもやってきます。
例えば一人旅でふらりと宿に訪れた青年や…。
合宿でやって来たサークル「オカルト研究部」の大学生。たった三人だけの、怪しい部活。
でも遊んでばかりの陽気な三人組。
長女の婿も三回忌のためにやって来ますが、当然若返ったお母さんを見てびっくり。
民宿だけにアットホーム。
お客さん同士で談笑する中、だけどここにいる若い娘がお母さんだと言うことに気づく人はいません。
お母さんはなぜ若返ったんだろう?これからどうなっていくのだろう?
そんな不安を子供たちがそれぞれに抱えつつ、まずは目先の三回忌を、親戚に怪しまれず、滞りなく行えるだろうか?という問題に家族一同、頭を抱え、奮闘するのです。
また物語は、三回忌を挟む三日間の話と平行して、お母さんがこの宿でかつてお父さんと過ごした若かりし頃の思い出がフラッシュバックして描かれます。
思い出の中のお父さんもやはり若く、青春時代を謳歌していた頃。
お母さんが当時仲の良かった女友達もお母さんの思い出の中に登場します。
しかし…。
時が経ち、お父さんの三回忌を迎えたとき、なんとあの頃の女友達が若いときのまま登場します。
友人との再会を大喜びするお母さんですが、周りの人々は困惑顔。
実はこの女性は、お母さんと仲が良かった友人の、娘なのでした。
つまりは、長女と同世代。
かつてこの合宿所でお父さんとお母さんが過ごした夏、子供時代に遊んだ者同士。
お母さんの友達だった思い出の中の女性は既にこの世におらず、お母さんはますます、取り残された気持ちになってゆくのです。
宿を立つ朝。様々な人が宿を去っていくその日。
お母さんはある一大決心をして、子供たちの前に立つのでした。
「さとがえり」
2009年4月3日~12日@下北沢ザ・スズナリ