ところでいつから日本では大晦日に格闘技を観ることが習慣になったのだろうか。紅白をやいやいとヤジを飛ばしながら見るのが大晦日の正しい過ごし方ではなかったのか。男勢がサクラバやらオガワに釘付けになっているので、私は今年も幸子の衣装がいかにして変貌するのかを見そびれた。CMになったときだけかろうじてチャンネル権を与えてもらうのだけど、そんなときは大抵演歌なのも切ない。NHKが視聴率を取ろうと思うならば演歌を見る視聴者層とグループ魂を見る視聴者層を考え、民法のCMとの折り合いをつけていただきたいものだ。
それでひとまず11時まではよくわからないままに格闘技を見せられ続けるわけだが、せっかくなら楽しもうと私も男たちの話題に参加してみる。
「どっちが勝つかな?」と言う議題に「あの人は顔が変だから負けてほしい」と言ったら男勢から鋭い目で「バラ!今、全格闘技ファンを敵に回したよ」と叱られた。どうやら紅白につっこむのと同じテンションで格闘技を観てはならぬようだ。仕方なく私は高山さんの年中無休な喋りに耳を傾けつつ、鍋の残りをつつくほかないのである。
しかし、格闘技が終われば話は別だ。チャンネル権は女が完全支配し、先ほどのレコ大を見れなかった時間を取り戻すかのごとくテレビの前を占拠する。そこで私たちが観るのは当然ジャニーズたちのスペシャルライブだ。
岡田君ますますかっこいいわあ!嵐はいつ見てもかわいいわねえ!そろそろマッチが出てくる頃よ!あ、やっぱり出てきた、さすがジャニーズは兄貴分を立てる演出ねえ!
女たちは口に立てた戸を吹き飛ばす勢いで泡を飛ばして盛り上がる。時々「ちょっと岡村の火の輪くぐりをみたいな…」などと男たちが控えめに言ってくるのだけど、そんなの見せてあげるのはそれこそCM分のほんの数十秒だ。