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吐露始め 2006/01/21 土曜日

「そ」 袖すり合うも他生の縁(そですりあうも・たしょうのえん)その3

ともかく、そんな完璧な(ありえない)出会いによって私と翔くんは出会い、彼の試合を見に(アホ!)行ってからと言うもの急速に近づきあって、そうして時は流れ、やがて当然のごとくバレンタインシーズンを迎えた。
私は翔くんに向けて上品なトリュフを作ることに決め、友人たちと材料を買いに行ったりしたのだけど、その辺りになってくると徐々に己のむなしさを無視できなくなってきた。周りの友達がみなクラスのだれそれにあげると言っている中で、私はいもしねえバーチャル男に高い金を使って手作りチョコを作っているのだ…。恋に恋する14歳、キャ☆などという浮かれた気分も、実際に自分の小遣いが減るとなると話は別だった。
それでも、チョコを作るだけならまだ良かった。いつだってイベントには率先して参加したい私だ。しかし、あまりに真実めかして友人たちに話してしまったせいで、どこでいつ渡すかという段取りまで決めなくてはならなくなってしまった。こうなってくるといよいよ引っ込みがつかず、塾の終わり、来もしない彼を待つことになった。
すっかり体も冷えた頃、翔クンが走ってくる。私が指先まで冷たくなった手でチョコを渡すと、翔くんは私の体をそっと抱き寄せ、そして震える私の唇にそっと初めてのKISS…。
などと、一人妄想に浸ってたとは言え、いもしない人間を2月の北風吹きすさぶなかで待つのはつらい。震える唇どころか、ガタガタと歯がなる。
寒さがピークに達したとき、一つの考えが浮かんだ。
「……失恋したってことにすっか。」
私はチョコレートを箱ごと道ばたに投げつけ、自分に言い聞かせるように一人で泣いて見せた。
「来なかった翔クン…ばか、ばか。もう、しらない…。」

ヨシ!
全うした!!
私は箱を拾ってチョコを持ち帰り、その日を最後に翔くんとお別れした。
チョコは割とうまく作れていた。

吐露終わり
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