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吐露始め 2006/04/13 木曜日

「な」 泣いて暮らすも一生笑って暮らすも一生(ないてくらすも・いっしょう・わらってくらすも・いっしょう)その1

むかむかしていた帰り道だった。
友人の芝居を観に行ったあといやな奴に出くわして、ニヤニヤと嫌味を飛ばされむかついていた。
嫌味を言われた元はと言えばの理由を思い返してむかついていた。
劇団員と電話をして、その頼りなげな様子にむかついていた。
そうして悪いことは何でも人のせいにしてしまいたい気分の自分にも、むかついていた。
何にでもむかついていたので、コンビニの店員が頼んだ煙草のソフトケースを持ってきた時すらむかついた。私はボックスと言ったのに、とむかついた。
雨が降っているのに傘がない、むかついた。
むかつきながら一人でラーメン屋に入った。好きなゴマ味のラーメンで己を宥めるつもりだったが、いつになく卵とキクラゲの定食に心惹かれ、そちらを頼む。
定食はすぐに運ばれてきた。見たところご飯がねちっとしてたので、「楽しみだったご飯までねち、か」とやはり少しむかつき、これで卵とキクラゲが今ひとつだったら私はまたむかついてしまうなと心で準備をしながら口に運ぶ。
ところがこれが、旨かった。
ふあんとした卵は甘いのにほのかにピリ辛く、コリコリの薄切りキクラゲはタレが染みこんでて、嗚呼ハーモニー。
うまいのにむかつく準備をしていたから顔が戻らない。うまいと思いながらムッとした顔で食べ、シェフよ、なかなかやりますなとムッの顔で厨房を見ると、バチリ、店主と目があった。
店主は私がどんな顔をして食べるのか見ていたのだ。
あいつは俺の味を気に入ったかな。うまそうに食べてるかな、と言う風に。
私はハッとし、慌ててうまそうな顔を作った。しかし時既に遅し、店主は目を離していた。

吐露終わり
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