ハワイの夜は穏やかだ。
穏やかにさざめく波の音。どこかの建物からゆったりと響いてくる、生演奏のハワイアンミュージック。
海岸沿いを恋人たちが手をつないで歩く。金髪の子供たちはママの腕のなか。
私たちはホテルのラナイで南風を感じながら、静かに眠りにつこうとしていた…。
「ね……今から踊り行かない」
なんつて!!寝ないでしょ!!
旅行っつったら夜遊びでしょ!夜遊びっつったらクラブでしょ!踊るでしょ!?
私のクラブデビュー(と書くとえらくダサいね)は、5,6年前、明星真由美嬢に連れていってもらった初めてのハワイ旅行だった。当時はまだおぼこくて、ダンスホールに躍り出る勇気もなく、カウンターで楽しげに踊る白人のかわいこちゃんたちを羨ましげに眺めるだけだった。
だが今は違う。開き直りという点で!
着替えて町に繰り出そうよ。東京ガールズブラボー@岡崎京子のようにサ!
そんなわけで、バカンス気分そのままに私たち一行はワイキキの町へ繰り出した。
へけけっしゅ!テンション上がるぜ!
初日に行ったのはワイキキのダンスクラブ「サンザ・バー」。
ただしこの日は平日だったため、人もまばら。DJも何つうか、「これでいいスカ」といった程度の手抜きの選曲でもったり。
まあそこそこには踊ったし、イー(私の人格を持った胃)が今日食らいすぎた分には運動したんじゃないですか?ってことで煙草を一服してからそろそろ帰ろうと原に声をかけに行ったら。
原が、知らない外人さんにナンパされている!!
だ、だれ!
彼の名はスチュワート。あまりに陽気なので以降は陽気なスチュワートさんと呼ぶことにした。そのままだ。
発音は良いが英語力はリルビットの原、ジオスに通っていたこともホームステイ経験もあるのにニューホライズンも読みこなせない私、そして海外旅行も初めての成清、そんなおのぼりさんの三人に、陽気なオーストラリア人・スチュワートさんは構わず話しかけてくる。
スチュワート(以後、ス)「(英語)日本人の友だちがいるんだ!彼の名はジロウ!」
ほお、有名人なのかな?
ス「ジロウ・ハマグチ!」
しらねえよ!
勢いに乗せられて、片言で会話は続いた。
日本好きだよ!納豆もイッツオーケー!というスチュワートさん。彼が日本で好きなのは、「オコノミヤキ」と「マンジャイ」なんだとか。
原が「Oh!漫才!」と言いながらツッコミポーズを取ったりして、陽気なスーさんもそれに返すが、でもどのお笑いコンビが好きなのかという話には「???」となったりしてて、漫才好きな割にはどうも話が噛み合わない。
お好み焼きと漫才と言えば「大阪」なのに、しきりに「トウキョウ!」と連呼しているし、そもそも最初は好きな食べ物の話で「オコノミヤキ」とでたのに、いきなり次に「マンジャイ!」が来て、何だか唐突である。
もう一度スチュワートさんに聞いてみた。
バラ「あのー、マンジャイって食べ物のこと?」
ス 「イエス、フード!」
え??こうなると会話というより、連想ゲームだ。
マンジャイ、オコノミヤキ、トウキョウ、フード………。
ああ!わかった!!
バラ「もんじゃ?」
ス「イエース!!!モンジャ、モンジャ!!」
オウ、モンジャ!イエス、モンジャ!WE・LOVE・MONJA!
何がそんなに嬉しいのやら、もんじゃもんじゃでハイタッチ。友好は深まった。
もはや目がうつろなスーさん。
っていうか成清さん、ゴキゲンだけどスーさんに酒奢らされてるYO!
ここは人が少なくてつまらんので違う店に行こうとスーさんが言うので、中国人の女のコがDJやりますという別の店へ移動。
聞くところによれば、彼は映画のエキストラをしながら、世界中を旅して回っているそう。ティム・バートンの映画(?)でスーパーのレジ打ちをしたり、あのゾンビ映画『28日後…』でゾンビに追いかけられたりしてるんだとか。既に40カ国回って、昨日まで日本の神保町にいたんだってさ。いきなり神保町っていう単語が、ちょっと面白い。
なるほど、それだけ全国一人で回ってきただけある、陽気さと人懐こさ。
そんな彼に話を聞く成清(@大学ではロシア語学科)が、「世界各地を回って」と言いたいのだろうに、英語が出てこず「ワールドワイド」とか言ってるのがおかしかった。
スーさんと原の最高におかしいショット。半端な口元のスーさんに、どういうつもりなのか、テンションも掴めない原。ボーイさんの割り込み笑顔も可笑しい。
ふたりはオサレなクラブでR&Bに全くそぐわない社交ダンス的な舞いをして見せ、原はスーさんに「ストレンジウーマン!」と称され笑いを取っていたが、端で見ている私と成清は非常に恥ずかしかった。
深夜も周り、成清の酒も大分回ったところで帰ることに。成清はどんな気を使ったのか同じ店にいた日本人の女のコ2人組の所へ「今度はあの子たちに遊んでもらいな」とスチュワートを斡旋していた。スーさんもまんざらではない様子で、わたしたちは賑々しくしくハグし、別れたのだった。
そして旅行最終日。この日はフライデーナイトでホテルの前では花火大会が!
花火を待って海岸に群がる人たちの光景は、ちょっと『LOST』を彷彿とさせて、イイ。
そんでもって、どうせ明日は飛行機で寝るだけだしな、とまたも別のバーに繰り出した我々。これまたワイキキのバー&クラブ。こちらはまさにアメリカンバーという雰囲気で、週末だけに大賑わい。
酔いどれております。
汗かいて遊びました。
嗚呼、ハワイの賑やかな夜が更けていく…。