« ママだったわけで。 | ばらこ胸中吐露辞典 トップ | 待ってました! »
吐露始め 2009/04/01 水曜日

まっさらなときのおもひで、「転校生」。

気づいてますか?ことわざの吐露部屋でなくなった今も、なんだか「ま」でタイトルをつけている律儀な私に。
そして気づいてますか?毎日続けると言ってもう一日空いてしまった事実に。
だって明日は小屋入りですよ。
普通は日記書いてる場合じゃないよネ☆

さて。先日まで池袋芸術劇場で『転校生』という舞台を上演していたのをご存じですか。
平田オリザさんが脚本を書き、飴屋法水さんが演出をされた舞台で、女子高生21名が出てくる、シュールで、切ない、舞台です。
初演は1994年。
青山円形劇場で開催された『青山演劇フェスティバル』の中のひとつで、オリザさんが現役女子高生を演出する!!という、何とも冒険的で、画期的な舞台でした。
うーんと、今回は15年ぶりの再演?とかですよね。
残念ながら私、この公演直前なた目に見に行くことが叶わなかったのですが、私からすると、ついに、ついに再演かああ!!という気分。

だってね。
なにをかくそう、アタシはその初演に出演した当時の女子高生です。
当時18歳、高校三年生。きらきら(かどうかはわからないが)。
演劇部の引退が目前に迫り、しかし演劇から離れるのが嫌で、初めて買った「演劇ぶっく」にのっていたオーディション情報がこの「転校生」。
平田オリザさん?もちろん知りません。
もちろんオリザさんは当時から大活躍、大注目の演劇人だったにもかかわらず。
だってあたし、それまで小劇場自体、ほとんど見たことがなかったんですよね。

とにかくお芝居がしたくて、女子高生でもOK!?と、勇んで応募したのがこの舞台でした。
オーディションの前日、オリザさんと会う夢を見たんですが、私の夢の中で、まだ見ぬ平田オリザという人は、赤いジャージを着たクルクルパーマのおばちゃんでした。
男か女かもわかっていなかった。
夢の中のオリザと名乗るおばちゃんに、竹刀を振りかざして怒られていました。
演劇にそんな体育会系のイメージを抱いていた…っつうか、オーディション自体、経験があるのは「元気が出るテレビ」のお笑い選手権くらいで(衝撃の事実。しかも最終選考まで残る)、経験に乏しかったのですな。

そんで、青年団という劇団を知っておかなくちゃと思っていたところ、ちょうどBSであの岸田戯曲賞作品『東京ノート』がやっていました。
見てみてびっくり。

な、なんじゃこりゃ・・・!!

二人の女性が、無言で、微妙な表情でほっぺたを引っ張ったりしてにらめっこしているという、それは今思い返せば東京ノートの切ないラストシーンだったわけですが、そこだけ観ると女子高生には全く意味不明の図でございました。
なぜ微妙な顔なのかは、ちゃんとお芝居を最初から観ていればわかるわけですが、そこだけたまたま観てしまった私はちんぷんかんぷん。
私もオーディションにいったら、微妙な顔でにらめっこするのだろうか。
ますます『転校生』への不安が募りました。

今でも憶えているのは、オーディションの数日前、学校の公衆電話から青山劇場に電話をかけ、「転校生って言うのは大林宣彦さんの転校生ですか」と聞いたこと。
丁寧に、「違います、オリジナルの作品です」と答えていただきました。
当時の私は大林作品のファンだったのですよ。
第二の小林聡美になれるのかと思ってたわけですよ。
たわけた女子高生です。

そして忘れられないのが、オーディション前日のこと。
その日はちょうど夏休み前、三年生の終業式。
片思いしていた男の子に告白できず、悔やむあまり家で大泣きしました。
それで、「私はもう演劇をやるしかない」となぜか恋のエネルギーまでをもオーディションに臨んだわけですよ。

その甲斐あってか(?)、幸運にもオーディションに残り、出演と相成りました。
そんでもって、なんと合格後、その片思いまで成就してしまいました。
よくわからんけど、受験シーズンまっただ中に、演劇と恋愛という、最高にエモーショナルなものに出会ってしまったのですね。
稽古中彼氏が出来たとか言って「転校生」のメンバーに自慢してからかわれたりした想い出…きらきら。

しかしながら思い返せば返すだに、この高校三年生の一年は、もの凄い出会いの年の始まりでした。
演劇部から離れて芝居から離れるのがどうしてもいやだった私は、転校生の応募通知を出す際、もう2通、別のところに応募していたんですが。

その一つがKAKUTAの前身となった劇団への参加希望ハガキ。
もうひとつが、堤泰之さん作演出の『櫻の園』という舞台のオーディション。
あの時出した3通の手紙が、まさか全て今に繋がるなんて、誰が予想できたでしょう。

そうそう。『櫻の園』は、まんまと落ちました。
女子高生だったから経験不足で落とされたんだな…とその時は自分に言い聞かせたものの、その実体は、「かわいい子しか受かっていなかった」というあまりにもスカッとわかりやすい現実でした。
あの時は、今後10年以上も一緒に芝居をさせていただくことになるなんて知らずに、堤さんのことを「あのハゲめ!」などと思っていたんだから罰当たりも良いとこです。
あのおじさん嫌い!とか思っていた癖に、その翌翌年はラフカットで再会し、あっという間に大好きになっていました。
ちなみに、その「かわいい子しか出ていなかった=櫻の園」には、今回KAKUTAに出演してくれているはらださほが出演していたという事実も。
さほと私の間に、静かに深く「かわいい子」と「そうでない者」を隔てる川が流れていることを、ふと思い返した次第です。

ともかくも、あの時は、オリザさんの「そうでない者」を迎え入れてくれた懐の深さに感謝です。
そうして、当時のオリザさんは今の私と同じ年くらいだったはずなのですが、そんなオリザさんを相手にお父さん呼ばわりしていた私たち。
今、姐さん呼ばわりされることも嫌な私がなにをかいわんやというところですよ。
しかしそんなお父さんは「アフターケア」と称しつつ、私たち女子高生を、女子高生でなくなってからも何かと助けてきてくれました。
時には相談に乗ってくれ、時には芝居を観に来てくれてアドバイス、そして時には台本のお手伝いまで…!

そうして出来上がったのが、まさに、もうすぐはじまる「さとがえり」の処女戯曲だった、というわけです。
ほらね。
稽古の話をまたしないのか、と思われそうですが、チャンと繋がったでしょう。
こうして繋がってみると、「さとがえり」、感慨深いものがあると思いませんか。
そして、現在KAKUTAの敏腕演助でバリバリ活躍している田村友佳もまた、私と同じ「転校生」の戦友であります。
あのオーディションの場でタムさんと出会ったから、KAKUTAがあるわけです。
タムさんと私が、アホすぎるくらい遊んで、バカをやって、出来た劇団がKAKUTAなのであります。
そんなタムさんと今もタッグを組んで芝居をしている。
明日も一緒に小屋入りです。

これまた感慨深いと思いませんか。

「転校生」、観たかったなあ。
そういえば、私が「転校生」で演じたのは美幸、という女の子でした。
全ての出演者が登場して、一番最後に登場する女の子の役。
この芝居は文字通り、朝、学校に転校生がやってくるというところが物語の始まりなのですが、台本が出来上がる前は、じゃあバラが転校生なんじゃないの?!と噂されたもんです。

ただの、遅刻してくる女の子の役でした…。

吐露終わり
もくじ
か行 (8)
さ行 (18)
た行 (20)
な行 (10)
は行 (1)
ま行 (12)
デエトブログ (1)
フォトギャラリー (22)
日記 (19)

最近の5件