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吐露始め 2009/04/22 水曜日

陽だまりの猫/6

家に帰ると、シーは元恋人の膝に抱かれていた。膝にいると少し落ち着くらしい。
昨晩と同じ様な症状に見えた。呼吸が浅く、目が開かれて、体はグッタリしている。
それで、昨日夜間病院から帰ってそうしたように、コーラをスポイトで飲ませてみた。
飲ませるとやはり、少し落ち着いたように見えた。だが、夕べも蜂蜜を飲ませて血糖値が20しかなかったわけだし、本当に低血糖なのか、やはり判断しきることが出来ない。
このままにしておけず夜間病院に電話すると休診日の留守電が聞こえた。T病院に連絡するかM病院に連絡するか迷ったあげく、今までの病状を知っているMにもう一度連絡をすると、幸いにしてM先生がつかまり、今から見てくれるというので、母の運転する車で元恋人と共に向かった。

血糖値は400以上あった。低いどころかむしろ高かった。コーラを飲ませるべきじゃなかったかと反省したが、M先生は「低血糖も高血糖も似たような症状なんです」と言った。
私も、このことであまり自分責めるのはやめようと思った。素人には、かようにわかりにくいものだということは、良くも悪くも糖尿病と向き合ってみてわかったことだからだ。
先生は母がいるので、また糖尿病について延々と話し始めた。
母は実家の犬や猫を診せてきたので、私以上に先生と関わってきたからだ。
私は処置を急いで欲しくて焦った。結局、血糖値の変動が不安定だからインスリンを打ってもまた下がりすぎちゃうかもしれないから水分を背中に入れましょう、という結論が出るまで、先生の話が行ったり来たりで長らく繰り返され、だいぶ時間がかかった。
そして、会計の段になり、母が払ってくれると言って私と元恋人が先にシーと共に車に戻されても、M先生は相変わらず延々と母と話していた。
私は早くシーを家に連れて帰りたくて、どうしようもなく苛立った。先生が話しているのは、私と見解が違ったこと、他の病院を薦めたことなどであるのはあきらかで、それはもはや母を味方に付けておきたいという先生自身の保身のためだった。
獣医師にとって今、猫の体調よりも優先することがあるのか。
ここまで書いてまた、やはりM先生は良い先生じゃないのかもしれないと思う次第だ。

シーの体調は、さほど良くならなかった。しかし少しだけ、呼吸が落ち着いている感じはした。
その日は、シーをベッドに寝かせ、一緒に眠った。
このところ睡眠不足が続いていた。今日こそはゆっくり寝ようと思いつつ、結局気持ちが落ち着かず、朝早く目が覚めた。

***

そして、今朝だった。
シーは同じ所に寝ていたが、ずっと目は開いたままで、眠れてる感じはしなかった。
やはり呼吸が浅く、元気がない。
予定より30分早く、診察開始の時間だろう9時にはT動物病院に連れて行くことに決め、朝食を取りながら様子を見ていた。
時折、ヒューンという泣き声を上げる。それは私がずっと、早くまた聞かせてくれと願い続けた泣き声とは違う、か弱い、小さな小さな泣き声で、そのたびに私も胸が詰まった。
泣き声の後、シーはソファで尿を漏らした。
これ以上負担を何もかけたくないとオムツもはずしていたから、大量のおしっこはソファに大きな染みを作ったが、ほとんど匂いはしないし、私も、もう気にもならなかった。
膝に乗せていると良いかもとずっと抱いていたが、体勢が苦しいかと思ってソファに寝かせた。シーの体の下に敷いていたタオルごと移動させようとしたら、首がグッタリしるため、持ち上げたタオルでのどが絞められてしまい、慌てて謝って寝かせなおしたりした。
後は口を湿らす程度に水を口に流してみたり、ヨダレを拭いてやったり、もうそんなことくらいしかできることはなかった。
ソファに移ると、シーはぐらぐらする首を頑張って持ち上げて下に降りたがった。
M先生が、頭がふらつくのは脳にも影響がいってるからだと繰り返し言ってきたことを思い出し、シーの揺れる頭を見るたびに苦しくなった。
降りようとしても足がうまく動かないので体は起こせない。シーは首だけで、私の膝を目指してるように見えた。
これはもう、飼い主の思いこみだと思われるかもしれないが、シーは私の膝に来たいのだと直感した。

あぐらの上に抱き寄せ、出来る限り首が苦しくないような体勢を取りながら、膝に寝かせたまま朝食を取った直後だったか。
シーは、またあのヒューンと言うような泣き声を漏らした後、ぐーっと体を伸ばす姿勢になった。
そして、苦しそうにケホケホとえずきはじめた。吐いても、胃液しか出ず、苦しそうにしている。
一番恐れていた瞬間が、迫っていると思った。
急いでT動物病院に電話し、元恋人には、自宅から徒歩数十秒の実家にいる母に、急いで車を出すよう頼みにいってもらった。
電話している間も、ケホケホとえずき、ついに呼吸が断続的になってきた。
目は大きく見開かれ、しかしどこも見ていない。
T先生はすぐ電話に出た。そして、それは本当に非常事態だから、早く連れてきてくださいと言った。
私は病院に連れて行くべきかどうか、またしても迷った。
電話している最中に、呼吸はほとんど止まっていた。時々、思い出したようにケホ、と息を吐くだけになっていた。
これこそ本当に、手の施しようがない瞬間に思ったから、私は迷った。
このまま逝かせてあげるべきなのか。
だけど、もしかすれば一時的なものかもしれない、もしかしたらまた落ち着くかもしれないと思うと、先生の言葉に従わずにいられなかった。
シーを抱いて実家に走り、母と元恋人と共にT動物病院へ向かった。

吐露終わり
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